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ラブライブ!シリーズでは珍しく歌詞先で曲を作っている梨子。
だからこそ、歌詞に書かれている内容から梨子の完成で感じたものが直接曲に落とし込まれており、その点で感覚や内容を共有してから作り始める他の子たちとはすこし構造が違うことが分かった!
そんな中で産まれた『Brightest Melody』。歌詞を読み込むと、それはこの世界でいちばん美しいものである「微熱」の究極形態であることが判明!えっつ、じゃあこれって微熱の音ってこと?
しかも、この曲歌詞先ってことは、梨子って千歌から「微熱の音作って!」って言われて作った曲ってこと?
す、すごーい!
3回に分けて梨子の手掛けた曲に見られる特徴を顕著に表した曲をピックアップし、その魅力に迫っていくこのシリーズでは、前回は『Brightest Melody』を取りあげました。
第2回目となる今回はそのもうちょっと先。
梨子の作る曲って、どういう音なの?
その音って、他のシリーズとどう違うの?
そしてその音からAqoursの曲ってどんな風にできてるの?
というところを『想いよひとつになれ』を通して深堀りしたいなと思います。
ちなみに、ピアノの話はあんまり出てきません。
劇伴が曲になる
『想いよひとつになれ』の特徴として、みんなが思い浮かべるものは、やはり劇伴から生まれた曲であることでしょう。
『TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』オリジナルサウンドトラック
Sailing to the Sunshine』収録の『想いのかけら』が、そのまま『想いよひとつになれ』のイントロとなっています。
海の音を探していた梨子が、曜、千歌と海に潜った時、海の中から太陽を見上げたときに使われた劇伴です。
梨子が1年の時に『海に還るもの』自体は存在していることから、どちらが先かどうかを考えるのはすこし怪しいんですけどその『想いのかけら』『海に還るもの』から『想いよひとつになれ』が産まれていること自体は間違いないと考えられます。
そんな『想いのかけら』ですが、この音は景色から生まれたものだと明言されています。
梨子 「イメージ?」
果南 「水中では人間の耳には音は届きにくいからね。
ただ、景色はこことは大違い。
見えているものからイメージすることはできると思う。」
梨子 「想像力を働かせるってことですか?」
果南 「ま、そういうことね。できる?」
梨子 「やってみます」
海中は真っ暗でなにも見えなくて、なにも聞こえなかった梨子を見て、曜と千歌が、梨子にとって海中が真っ暗に見えたのは、梨子が海の中で下を見ていたからである事に気づきました。
もう一度海に潜り、海中から太陽を見上げたとき、全員が「聴こえた」と言っていたこの劇伴が使われましたが、このことから、
海の音=『想いのかけら』=景色から生まれた音≒『海に還るもの』
の図式は成り立つと思います。
10話『シャイ煮はじめました』時点で『想いよひとつになれ』は完成していないため、この曲は上の図式で結ばれているものより後に生まれたことになり、従って、『想いのかけら』から『想いよひとつになれ』は生まれていると言えます。
この構造は、『起こそうキセキを!』を始めとする2期メインテーマと、2期BD特典であり劇場版挿入歌である『キセキヒカル』についてや、『ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 6th LoveLive! ~KU-RU-KU-RU Rock 'n' Roll TOUR』アタックムービーと『なんどだって約束!』でも当てはまりそうです
また、他シリーズのキャラクターにも似たような描写はありますが、梨子ほどは顕著ではありません。
例えば、スーパースター!!の劇伴『結ばれた想い』と『瞬きの先へ』も同じテーマが使われていますが、『瞬きの先へ』自体はアニメ作中では登場していません。
また、『ラブライブ!スーパースター!! Liella! First LoveLive! Tour ~Starlines~』での『瞬きの先へ』は作中で『結ばれた想い』が劇伴として使われたシーンに被せるように披露されており、『結ばれた想い』から『瞬きの先へ』が生まれたというよりは、スクスタの挿入歌のように劇伴と互換性のある楽曲として扱われています。
従って、
『想いのかけら』→『想いよひとつになれ』
に対して
『結ばれた想い』=『瞬きの先へ』
と言えそうです。
無印でも2期2話『優勝を目指して』で真姫がにこから説教されるシーンで使われた『いつもどんなときも、全員のために』と『僕らは今のなかで』、2期11話『私たちが決めたこと』で使われた『この先の私たち』と『どんなときもずっと』が同じテーマが使われています。
『僕らは今のなかで』が『いつもどんなときも、全員のために』より後に作られたのかは明言されておらず、登場自体は曲の方が先なので微妙ではありますが、真姫に関しては梨子と似た特徴を持っているとはいえそうです。
また、真姫、ミアについてですが、スクスタでは梨子と同じく、劇伴が曲になっているシーンが多々見受けられます。
例えば、スクスタ6章9話『最後の勝負』で真姫がピアノを弾くとき、真姫をホーム画面に設定している時のテーマのアレンジが流れます。ミア、梨子も同様のシーンがあり、特に、梨子と真姫はイベントでピアノを弾くときには毎回そのような演出が入ります。
しかし、これらのアレンジ曲についてですが、真姫とミアの曲は、キズナエピソードで「あなた」が作った曲であることが判明しています。それに対し、梨子はキズナエピソード最終話『青くきらめく奇跡』で「あなた」の前で披露しており、梨子に関してはこの曲が自作であることが分かります。
また、梨子と「あなた」のキズナエピソードは、全体的に作曲で共に悩む同志として描かれています。
それに対して、梨子と絡まない「あなた」である侑にはその特性は見られなません。
キズナエピソードでも、メインストーリーでも梨子の影響を受けている「あなた」は劇伴のアレンジを曲にでき、それに対して梨子と絡まない侑はその特性を持ち合わせていないことから、劇伴から曲を作ることは梨子の持つ特徴であると言えます。
これらのことから、梨子の作曲の特徴として、劇伴との関わりは外せないものだと考えられます。
劇伴は情景
ここまで、「梨子は劇伴から曲を作れる」と書いてきましたが、もう少し詳しく掘り下げてみましょう。
単純に劇伴から曲を作れるという特性として処理するのではなく、劇伴から曲を作るのって具体的に何が起きているのかという話。
先ほど、
海の音=『想いのかけら』=景色から生まれた音≒『海に還るもの』
という図式を挙げましたが、一般化してみましょう。
梨子にとっての「音」=劇伴=景色から生まれた音≒楽曲
となります。
またその景色についても、果南から「見ているものからイメージ」と言われていたように、写真に映ったような景色ではなく、心に描いたものだったり、景色から派生して生まれたものだったりする物に焦点が当たっています。
景色というよりも、たぶん情景という言葉の方が適切ですね。
実際、海の音が聴こえたときも、そのきっかけとなったのは視覚の変化でした。
視覚から得られた情報が、共感覚のように音として結びつくだとか、音という表現によって視覚的情報を描写したとか、結びつきの説明自体は諸説ありますが、いずれにせよ、音ではないものを音として認識していることは間違いないでしょう。
その点については、2期2話『雨の音』で使用された『Raindrop Melody』と『MY舞☆TONIGHT』とは区別して考えるべきでしょう。
むしろ、劇伴から作曲した曲を比較対象として出すことで、実際の音ではなく「情景=音」から作曲している梨子の特異性を際立たせるものでもあると言えそうです。
では、その「情景」とは何なのかについて『想いよひとつになれ』ではどうだったのかについて見てみましょう。
まず、10話の千歌、梨子、果南の会議シーンで、千歌と梨子が「たいせつなもの」をテーマに曲を作っているという話をしていました。
この、「たいせつなもの」は「情景」であると言えそうか見てみましょう。
梨子 「私ね、分かった気がするの。
あのとき、どうして千歌ちゃんが、スクールアイドルを始めようと思ったのか。
スクールアイドルじゃなきゃダメだったのか。」
曜 「うん。千歌ちゃんにとって、輝くと言うことは、自分ひとりじゃなくて、誰かと手を取り合い、みんなで一緒に輝くということなんだよね。」
梨子 「私や曜ちゃんや普通のみんなが集まって、ひとりじゃとても作れない大きな輝きを作る。
その輝きが、学校や聴いてる人に広がっていく。繋がっていく。」
曜 「それが、千歌ちゃんがやりたかったこと。
スクールアイドルの中に見つけた輝きなんだ。」
そして、「なにかをつかむことでなにかをあきめない」と歌われているように、この曲で大切にされているものがもうひとつあります。
学校や街の事が大事なのはわかる。
でも梨子ちゃんにとってピアノは同じくらい大切なものだったんじゃないの?
その気持ちに、答えを出してあげて…。
私待ってるから、どこにも行かないって約束するから…!
そう、内浦に来る前の梨子が持っていて、そして失っていた、ピアノが大好きな気持ちでした。そして、梨子は2話でこう語っています。
だって、ピアノを弾いてると空を飛んでるみたいなの!
自分がキラキラになるの、お星様みたいに!
スクールアイドルの中に千歌が見た輝きが、広がって行って、大きな力になって繋がっていくこと。
ピアノを弾いていると、空を飛んでいるように思えること、星のように自分が輝いて見えること。
どちらも梨子にとって大切なものですが、それらは梨子の心の中にあるワンシーン、思い出、描いた夢、つまり梨子の見た情景であると言えます。
また、梨子が『想いのかけら』を聴いたシーンは、千歌が気付いて梨子に伝える形で描かれているため、千歌の見つけた輝きが曜や梨子に伝播していっていると言えそうです。
また、その輝きは空を見上げて見つけたものでしたが、結果として梨子はピアノが大好きだった気持ちを思い出すことができました。
直接の因果関係があるかは分かりませんが、それでも表現としては近いものではないでしょうか?
『想いのかけら』は、スクールアイドルの輝きが広がっていく景色と、大好きなピアノを弾きながら見た景色という、2つの情景と結びつくものだと言えそうです。
とはいえ、劇伴というものが作り手によって何らかの表現として作られているため、「情景」と切り込んでしまうよりも、曲のインスピレーションが劇伴の表現対象と一致しているため、
劇伴=劇伴の表現対象 ⇒ 楽曲
であり、情景から曲を作っているというよりも、「劇伴から曲を作っている」という説明のままにしてしまった方が正確ではあるのかもしれません。
しかし、梨子の表現対象はかなり情景に寄っていることは間違いはないと思われます。
スクスタのキズナエピソード最終話で、梨子のホーム画面テーマのアレンジが披露されたとき、この曲のテーマが海であることが明かされました。
そして、「あなた」と梨子はこの曲に対してこうコメントしています。
あなた (……穏やかで、でも時々激しくて……胸に深く、じんわり染み渡る、身を委ねればどこまでも遠くに行ける……
海みたいに深くて雄大な旋律……)
あなた 「梨子ちゃん、私、梨子ちゃんたちに会えてよかった。
これからも一緒にいたい。海みたいに、この曲みたいに
きらきらした思い出をもっと作りたいよ」
梨子 「あなたと出会えた奇跡を、そのきらめきを、感じた喜びを、ひとつ残らず音に込めるわ」
海という景色に、梨子の中にある喜びと、きらめきと、これからの未来に向けた願いが重なって、胸の中にある特別な情景となっていて。
それが、「あなた」と出会えたことによって生まれたものだから、梨子のホーム画面では、その喜びと、きらめきと願いが込められた海の音が流れています。
そして、梨子がそれらの想いが結びついた海という場所のことを曲にするとき、それは、その想いが結びついた劇伴のアレンジとして奏でられることになりました。
また、『キセキヒカル』についても、挿入歌として使用された場面が、本来は『ホップ・ステップ・ワーイ!』が挿入される予定だったことや、挿入されるシーンが6人と浦女、静真の在校生たちによるステージづくりと、6人での練習シーンだったことから、ここの挿入歌は「みんなで新しい夢に向かって頑張る」シーンという意図の挿入歌であったと考えられます。
そして、『キセキヒカル』の元になったと考えられる『起こそうキセキを!』のテーマが使われていたシーンは、目標に向かって決意を新たにするシーンや、目標に向かって全員で頑張るシーンであったということができるでしょう。
『キセキヒカル』も、青い空を見上げて輝いている太陽に、みんなと手を取り合い頑張ってきた日々という情景が結びついてできたものだと言えます。
最後に、『なんどだって約束!』と6thアタックムービーですが、ライブの始まりに流れるものであるため、私たちとAqoursが対面すること、つまり、ライブという空間そのものと結びついたものであると言えそうです。
そして、そんなみんながいる景色に、「みんなとの約束」が結びつくことで、それは「東京ドームという場所でまた会うとみんなと約束する」という情景となり、そこから生まれた『なんどだって約束』は「東京ドームにみんながいる」という景色を表現した曲である、という説明は、特に不自然な点はないと思われます。
以上のことから、
劇伴で表現されているものは、梨子の胸の中に描かれる景色である。
その情景から曲が生まれるとき、情景と結びついた劇伴が、まるで聴こえているかのように、梨子の曲として出力される。
ということが言えます。
もちろん、すべての劇伴が梨子にとって聴こえているかどうかは分かりませんが、梨子というキャラクターの特性としてそれがある以上、
劇伴≒梨子の胸の中で描かれる景色
と言ってしまっても問題はないと思います。タブンネ。
ラブライブ!サンシャイン!!の情景って綺麗だよね。
さて、ここまで、
梨子の作曲の特徴として、劇伴から曲を作れることが挙げられる
劇伴は梨子の胸の中の情景と結びついている
情景が曲になるとき、結びついた劇伴が「聴こえる」
ということを説明してきました。
それでは、なぜこれらが梨子の曲が美しいことの根拠になるのかというと、単純にラブライブ!サンシャイン!!の情景描写が美しいからだと思います。
これを言ったら元も子もないし、なんならこれ以上説明することも特にないんですけど、ラブライブ!サンシャイン!!の情景描写が美しいので、そこから出来ている梨子の曲も美しいんですよね。
酒井監督もいろんなところで言及されていると思うんですけど、沼津、内浦のあの景色を映像として残すことに本当にこだわりをもって作られていて、その精神は、アニメを離れた他の媒体でも大切にされていて。
きっと、突き詰めるとラブライブ!サンシャイン!!だから、沼津だから、内浦だからっていう、それ以上の理由を探らなくても作品のなかに描かれている景色が答えだと思うし、それだけで説明十分なんじゃないかなって思います。
……「なんで美しいの?」っていう質問に対して、「美しいものと繋がっているからです」っていう解答、実はそんなに答えになってないんじゃないかな~とか思いつつ、でもその美しさの断片には触れられたんじゃないかなと思います。(ちなみにこの文章は前回の内容からコピペしました)
というわけで、今回は『想いよひとつになれ』を題材に梨子の曲の美しさについて探ってみました。
その正体は、美しい景色の中にあったんですね。
さて、ここまで劇伴と情景と曲を中心に話を進めてきましたが、いかがだったでしょうか?
ちょっとでも新しい発見があったら嬉しいです。
さて、このシリーズもいよいよ次回が最終回となります。
次回は、ようやく核心に触れることができそうです。
どうして、梨子は「微熱」そのものを作ることができるの?
どうして、梨子は内浦の美しい情景と結びついた劇伴が「聴こえる」の?
どうして桜内梨子というキャラクターは、これらの特性を持ち合わせているの?
次回
なぜ桜内梨子の音楽は美しいのか 後編
2023年9月19日0:00分投稿。
……次は予告の時間通りに投稿出来たらいいなあ……。
あとがき
こんにちは。投稿が盛大に遅れてしまった黒鷺です。
6000文字ちょいしかないので1日あれば余裕wみたいな感じに舐め腐ってて、書き始めたのが前日のお昼ぐらいなんですけど、労働したり寝てたりしたら遅刻しました。
……ダメじゃない?
さて、今回は逢田さんの誕生日に合わせての投稿となりました。
前回がタグ企画で、次回が梨子誕なんですけど、ちょうどその間にあるこの日が記念日としてちょうどよかったのでこのタイミングになったみたいです。
ちょうどおもひとだしラッキー!っていうアレはあるんですけど、でもこの日におもひとの話挙げといて逢田さんの話一切してないんですよね。怒られそう。
とはいえ、やっぱり1stの出来事は大切なものではあるんですけど、おもひとってそれだけじゃないんですよね。
でも、やっぱりおもひとといえば1st。4th。それはそう。
そういうイメージが強くて、逆に言えば他の要素でこの曲の話をしていることってあんまりない気がするので、今回この記事をこの日に投稿することにも何か意味があるんじゃないかなって気もしています。
逆張りをしている気はないんですけど、こういうの逆張りっていうんですかね。わからない、わからないままでなんとかなるさとAh!始めよう(何を?)
というわけで、今日は逢田さんのバースデーイベントに行ってきます。
楽しむぞ~ 女性声優最高!ぶひ~!!!