#てつがくのドンカラス

それでは皆さん元気よく!不意打ち追い討ち?桜内!得意な技は?タイプ不一致!

「あなた」モノクローム【ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 3rd Live! School Idol Festival ~夢の始まり~】

 ちょっと前、もしかしたらだいぶ前に感じるかもしれないけれど、ほんのちょっと前のお話。

 

 あの日、大きな橋のふもとで夢を見た。

 こことよく似た、それでもちょっとだけふわふわした世界。

 

 橋の先に広がる夢の世界にみんなが駆けていく。

 でもね、わたしはこっちでまだやらなきゃいけない事があるんだ。

 だって、「わたし」の夢は、こっち側なんだから。

 

 

 それでも、私だって夢を見たいから。みんなと一緒にいたいから。

 だから、もう一人の「私」が産まれた。

 「私」はわたし。

 「わたし」は私。

 私は橋の向こう側へ走ってく。

 きっとあの橋の向こう側で、私が夢を見てくれる。

 わたしはこっちで夢を見る。

 

 

 

 

 それから月日が流れて。

 橋の向こうから花火が揚がった。

 夜空に大きな虹が掛かった。

 橋の向こう側で、きっと「私」が夢に辿り着いたんだ。

 向こうに走ってった、みんなと「私」が。

 こっちのわたしもすごく嬉しかった。

 

 

 

 橋の向こうから「私」が返ってくる。

 帰ってきた「私」は「わたし」じゃなくて、すっかり変わってしまったもうひとりの「私」。

 「大きくなったよね」

 わたしは笑う。

「お互い様さ」

 私も笑う。

「もうわたしの面影なんてないんじゃない?」

「でも、私はわたしなんだよね」

 そう言うと、私はわたしの中に帰っていった。

 

 

 これもわたし。紛れもない私。

 笑っちゃうぐらいに。呆れるぐらいに全く違うわたしと私。

 「あはは」

 笑っちゃうよね。

 わたしのこの気持ちも、きっと私の気持ち。

 

 それでも。

 名前を呼ぶ声が聴こえる。

 私を呼ぶ声、わたしを呼ぶ声。

 どっちだろう?どっちのわたしなんだろう?

「あなたともっと先へ走っていきたい!」

 ああ、わたしだ…。

 

 走っていきたいのはわたし。走っていきたいのもわたし。

 どっちも大切な、本当の私。

 トキメキが始まった時から逃れられない運命。

「また夢が見たいんでしょ?」

 わたしの中の私が首を縦に振る。

 仕方ないなぁ。

「全く、暴れん坊になったよな」

 わたしはからかってみる。

 「それもわたしでしょ?」

 私はニヤリと笑う。

「行ってきな」

 橋の向こうへ、もう一度走っていく私を見送りながら、私は苦笑いする。

 やれやれ、こっちの夢もまだまだ先があるのに、あっちの旅を見守るのももう少し続きそうだ。