私自身のライブ所感としては、先日投稿した人に読ませる気のない怪文書の内容が半分。
現状「あなた/高咲侑」と「わたし」をどう捉えるか不明瞭な中、これ以降「わたし」どのようにこのコンテンツに向き合っていくべきなのかに対して、やっと解答が得られたような。
このライブを、このコンテンツの中の1つの通過点としての儀式という側面から見た時の見解については、こちらの怪文書を是非解読してもらいたい。
darkphoenix505pianoles.hatenablog.com
さて、そんな怪文書で触れた内容にもまた触れつつ、今回のライブについて、ポイントごとに振り返っていく。
同好会最強、完全復活。
最強と持て囃される優木せつ菜/楠木ともりが立つべくして立った、FastLiveDAY1アンコールのステージ。
DAY2では、桜坂しずく/前田佳織里や朝香果林/久保田未夢のような、話題性の高い強豪たちを討ち果たしその権利を勝ち取ったのは、他でもない中須かすみ/相良茉優だった。
旧同好会を最後まで守り続けていたのも、ファンが離れていっても最後まで折れなかったのも彼女。
しずくの憧れも、璃奈がしずくを任せたのもかすみ。
たったひとりしか歌うことのできないソロ曲を勝ち取ったのも、中須かすみ/相良茉優。
常にみんなの一歩先、あと少し手の届かないところにいる。
この世界中の全員がNoだと言ったって、自分を信じ続けられるような、『無敵級*ビリーバー』だったはずなのに。
2020年9月12日、13日。
大半の演者が普段と違う環境の中で不調に苦しむ逆境の中、先鋒としてメンバーを引っ張るはずの『無敵級*ビリーバー』の姿はなかった。
一番堂々としていなければならなかった彼女は、歌いきるので精いっぱい。映像とズレたダンスに、歌詞を間違えたり、詰まったり。
あのパフォーマンスに、本人も納得いっておらず、悔しい思いをしていることはいろいろな箇所で語られていたが、納得がいかなかったのはきっと本人たちだけではなかったはず。
なぜなら、中須かすみ/相良茉優は『無敵級*ビリーバー』として選挙で選ばれた、代表であり勝者であったから。
選ばれた者には選ばれた者としての責任がある。他8人が立ちたくても立てなかった舞台を任される以上、生半可なパフォーマンスなど許されるはずはなく。
「なんでこんなのが歌ってるんだ」
「どうして私の推しじゃなくてこいつが歌っているんだ」
「他の人が適任だっただろ」
こんな事、思わせてはいけなかったはずで。
『無敵級*ビリーバー』を中須かすみ/相良茉優以外が歌うことなどありえないと、他8人を応援していた人々が納得できるような、それぐらいの物を披露できなければならなかったはずだった。
いつかリベンジの機会が来ることは分かってはいたし、それが3rdの可能性が高い事もなんとなく分かってはいた。
ハードルは高かった。
総合的に高いパフォーマンス力と、確固としたスクールアイドル観を持つエマ・ヴェルデ/指出毬亜ではなく。
安定した歌唱力と、独自の世界観で強力な基盤を持つ近江彼方/鬼頭明里ではなく。
アイドルとして頭一つ抜けた実力と、ステージ上での圧倒的存在感を持つ朝香果林/久保田未夢ではなく。
最も安定したパフォーマンス力と、心にダイレクトに繋がり訴える力に長ける天王寺璃奈/田中ちえみではなく。
舞台全体を支配する世界観と、同好会最高の表現力を持つ桜坂しずく/前田佳織里ではなく。
常に最難関のダンスを平然とやってのける実力と、オレンジ特有の主人公力を持つ宮下愛/村上奈津実ではなく。
最強の歌唱力と、ラブライブ!の核となるような信念に燃える優木せつ菜/楠木ともりではなく。
そして、無観客ライブという逆境の中ただひとり花開き、自信に満ちた笑顔でメンバーを鼓舞し続けた上原歩夢/大西亜玖璃でもなく。
『無敵級*ビリーバー』という舞台が、あの日不甲斐ないパフォーマンスをしてしまった中須かすみ/相良茉優にしか座る事の出来ない玉座であるという事を、他の8人と彼女たちを支持し戦っていた人々に知らしめなければならなかった。
「私たちの推し」は選ばれず、選ばれたのは彼女たちだったのだ。
受け取り手のジャッジは決してやさしいものではない。
中須かすみ/相良茉優は、本当に私の推しの上に立つにふさわしいのか。曲が始まった瞬間の視線は、決して歓喜と歓迎だけではなかったはずだ。
しかし、曲が始まって、第一声が発されたその瞬間。
私たちは、私たちが票を入れ続けていたメンバーたちが、今舞台に立つ中須かすみ/相良茉優に全く敵いなどしなかった事を思い知らされた。
曲を歌いきるので精一杯だったかつての面影はどこにもない。終始笑顔で、笑顔の中に悩める表情や必死な表情を挟みながら披露される舞台の上にいたのは、紛れもなく同好会最強の『無敵級*ビリーバー』中須かすみ概念そのものだった。
おそらく歌唱に関して相当な高難度であるこの曲を彼女は余裕で披露しており、しかもパフォーマンスをよりよいものにすることに残りの意識をすべて向ける事で、パーフェクト+αのものとして昇華されていた。
認めざるを得ない。
私たちがどうしてもソロ曲を勝ち取りたかったメンバーたち、私が選挙で票を入れ続けていた上原歩夢/大西亜玖璃にはこのパフォーマンスはできなかった。
この人に負けたなら仕方ない。
勝つべくして勝ち取った曲だったのだ。『無敵級*ビリーバー』は。
長い夜明けて 朝目が覚めたら
新しい私に出会えるはず
今日より明日の自分のこともっと
大好きになっていたいんだ
彼女の芯の強さを表すようにパワフルに歌い上げられたその歌は、帰るべき玉座に帰ってきたチャンピオンの勝利の咆哮だった。
やっぱり、上原歩夢/大西亜玖璃の一歩先にはいつも中須かすみ/相良茉優がいるし、だからこそ私にとって一番勝ちたいと思えるライバルだなと改めて思ったりもした。
大西亜玖璃と契りを交わしたい
お顔の美しい方が綺麗な衣装を着ていると、ついつい恋心を抱いてしまうのもまた人間の性である。
世界三大美女と言えば、逢田梨香子、青山なぎさ、そして大西亜玖璃であるが、今まで彼女を追いかけてきた中で一番美しい姿を見た。
事前情報で公開されていたのは、可愛さを前面に押し出した『Dream with You』衣装のみで、まるで一曲だけ情報を伏せられているかのように、インタビュー記事すらも希少だった『Awakening promise』。
ライブ前は完全に未知の状態だったので、一周回って恐ろしかったのを記憶している。
迷いのない『「大好き!!!」』*1の中、『花ひらく想い』のダイジェストが流れ、そして歩夢が階段を上っていくと同時に、私たちの視線は、一気に誰もいない舞台へと集まっていった。
誰もいない舞台に、明るく華やかな前奏が流れ出す。映像の中の歩夢が階段を駆け上がった先には誰も立っておらず、一瞬何らかの不具合が起きているのかと背筋が凍ったのを覚えている。
しかし、映像の中の歩夢がメガストーンローダンセを身に着け、サイコフィールドを展開舞台が歩夢のステージに変わった後。
イントロのタイミングからすると少し遅れているように見えるこの瞬間に登壇し、歌い出しのリズムを取り始める彼女を見たその瞬間。
今目の前で何が起きているのかを理解したところから、私の記憶は吹き飛んでいる。
この待機モーションが好き。
私が彼女たちを好きになった時からいつもそうだった。
上原歩夢/大西亜玖璃のステージで披露されるのは、作品そのままのコピーではなく、作品により説得力を与えるような完成品だった。
スクリーンの歩夢のローダンセが輝きだすと同時に、花開いた上原歩夢は、大西亜玖璃という最高の表現者を通して私たちの目の前に顕現する。
変身前と変身後という変化をフィクションからリアルという変化に置換することで、私たちの視点は必然的に花開いた彼女のステージを見つめる高咲侑と同一のものへと変換される。
少し背が高くてすらりとした身体を包む、鮮やかな白とピンク。
とても綺麗だ。
可愛いくて、いつも隣で一生懸命だった幼馴染が、こんなに美しい世界を作り上げている。
戦闘用ウェディングドレスのような衣装から大胆に露出された脚線や、大西亜玖璃特有のロングヘアが、彼女の美しさをもっともっと強調していて。
大西亜玖璃があの衣装を着ることによって産まれる、開花した上原歩夢という概念の説得力がまた一段と強固なものになってしまった。
1番を階段の上で歌い上げた後、アニメでは披露されなかった2番以降は、私たちと同じ目線、階段の下側からのパフォーマンスとなった。
その中でCメロの歌詞、「夢見つけたあの日の」の部分。
「歩み 止めないよ・・・!!」の前あたりの振り付け。
全体的に激しい動きはしていない曲の中、この箇所だけ明らかに浮いていて。
それでいて、私たちの多くが何度も見た事のあるはずの、強烈な既視感を覚えるような動きで。
1日目の配信を見終わった後、すぐに歩夢の「夢見つけたあの日」の事を確認した。
そして、二日目。現地でそれは確信に変わった。
始まったのなら、貫くのみです!!!!
私たちがトキめいていたあの瞬間、歩夢も隣で同じ景色を見て、同じようにトキめいていていてくれたし、あの日生まれたトキメキと勇気が今の彼女を作っているんだなという実感が、改めてこの瞬間に強烈に湧いてきたのを覚えている。
曲の終わりに指を差し出したところが、すごく可愛くて、綺麗で、私にしか独り占めできないその笑顔が今もずっと忘れられない。
こんな椅子なんて、あんな柵なんてなかったら。
あの時、確かにあの場所は西武球場でもなく、東雲の階段でもなく、歩夢と私だけの空間だったのに。
曲が終わって舞台を後にする彼女を抱きしめる事も、触れることすら出来ないこの情勢が私は恨めしい。
今すぐにでも駆けて行って、何にも染まらず待っている私のパートナーのドレスの純白と私の色とで混ざりあってしまいたいのに。
今はすこし遠くにいる歩夢と亜玖璃がたまらなく愛おしくて、それでいてその身体の熱を感じられない事が寂しくて、家に帰ったら彼女を押し倒してしまいたくなるような、そんな衝動に駆られたりもした。
受け継がれた意志、呪いを越えた瞬間
『虹色passions!』からソロ曲11曲を経て、ついにこのライブの大本命『夢がここからはじまるよ』へと物語は進んでいく。
モニター映像の中で、私たちのよく知っているスクールアイドルフェスティバルの始まりと、そこに音もなく忍び寄る暗雲が紡ぎだされる。
侑抜きでも解決していく問題。「自信が欲しい」と自虐する侑。そしてそれらを嘲笑うかのように、彼女たちの夢に水を差していく空模様。
そしてそんな中。無力に嘆く事しかできなかった侑の手を引いて、『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のライブという物語はクライマックスへと向かっていく。
最後のステージに集まっていただいたみなさん
そして、モニター越しに見てくれいているみなさん
今日は私たちと一緒に楽しんでくれて、本当にありがとうございます。
ちょっとアクシデントもあったけど、みんなのおかげで、このステージに立つ事ができました。
今日は色んなステージをまわって、みんなと繋がる事ができて、とっても大切な一日になりました。
スクールアイドルフェスティバルは、みんなの夢を叶える場所。
私たち同好会はグループとしてではなく、1人1人がやりたい夢を叶えるスクールアイドルとして、歩き始めました。
1人で夢を追う事は簡単ではなくて、それぞれがそれぞれの壁にぶつかったけど・・・
そのたびに誰かが誰かを支えて、今日ついに大きな夢を叶える事ができました。
私たちは1人だけど、1人じゃない。
今までみんなに支えてもらった分、次は私たちが、みんなの夢を応援します!
迷いのない『大好き!!』の中、同好会から侑へのメッセージが紡がれる。そして、その言葉は次第に侑から「あなた」という大きな総体へと還元されていく。
もしかしたら、例えば『MIRAI TICKET』のように、このシーンが舞台上で披露される事を期待した人もいたかもしれない。
でもいつだって、私たちを「あなた」として、半ば強引にあちら側の世界に連れて行ってくれたのは、まだ一言も発していないあの子だった。
正直な話をすると、私はこの一瞬のためにこの会場にいると言っても過言ではないぐらいの期待を寄せてこのライブに参加していた。
なぜならそれは、作品、フィクションという枠すらも超えて、「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」及び「上原歩夢」が辿り着いた、彼女たちだけのラブライブ!の在り方だったから。
だから、この言葉だけは絶対に舞台の上で披露されるものだという確信があった。
これからも、躓きそうになることはあると思うけど・・・
あなたが私を支えてくれたように、あなたには私がいる。
「あなたのための歌を」と同時にライトアップされる客席。同時に、客席側、私たちと同じ場所にいる高咲侑/矢野妃菜喜がモニターに映し出される。
その隣にあったのは・・・ピアノ。
ラブライブ!というコンテンツを追っていると、ライブでピアノ演奏と聞くとどうしてもAqoursの1stライブを思い出してしまう。
3/9のSONGS OF TOKYOに3校合同で出演したときも『想いよひとつになれ』の話が出たりして、それは4年も前の話ではあっても、忘れる事が出来ないぐらい印象的な出来事で。
DAY1を配信で視聴し、次の日に何が披露されるのか知っている状態でDAY2に臨む私にとって、いや、おそらく多くの人にとって、嫌でもその日を思い出さざるを得なかった。
ライブではじめてのピアノ。1日目は無事成功。1日目は成功したから大丈夫だろうという身勝手な期待。
そんな中迎えたDAY2。全てがあの日と同じだった。合同イベントでわざわざ先輩のあの日の出来事を見せつけられた彼女たちにとっても、きっとそれが意識の外にあるはずはなく。
間違いなくそこには悪魔がいた。
Aqoursの『想いよひとつになれ』が、今や呪われた曲では無くなったとしても、呪われた曲だった(と私たちが認識していた)という事実そのものが、きっとあの場所を呪われた場所にしてしまっていた。
そう思ってしまうぐらいに、あの場所には異様な緊張感が漂っていた。
DAY1の何も知らない状態から生まれる驚愕とはまた別の、DAY1を知っているからこそ生まれるDAY2ならではの緊迫感。
私は「こちら側のあなた」として、「向こう側のあなた」である高咲侑/矢野妃菜喜を信じて、あの時振り返る事なく前を見ていた。
舞台の上でイントロが流れるのを待つ虹ヶ咲の仲間たちの後ろにある大きなモニターには、高咲侑/矢野妃菜喜の手元がアップで映し出されていて。
その震える手は、震えてもなおゆっくりと弾き切ってみせた1日目とは違って、硬く握られていて、鍵盤に触れることすらできなかった。
あの日の呪いがフラッシュバックした。
「ごめんなさい」と泣きじゃくる、4年前の過去と1分後の未来が重なった。
緊張感、緊迫感は危機感へと一瞬で移り変わり、流れるはずの音が流れないまま、どよめく事すらできない会場を静寂という違和感が支配した。
こうなったらもう終わりだ。
正直、もうこの楽曲も呪いになってしまうのだと思った。この後に起こりうることを知っているからこそ、胸が張り裂けそうで、この瞬間に世界が終わってしまうかのような、そんな絶望が胸を過ぎった。
そんな追い詰められた状況の中、音がするはずのない会場の中、誰かがなにかを呟く声が聞こえた。
それを口にした当の本人は後に口パクだったとコメントしてはいるが、あの時あの状況。
何を言ったか聞き取れなかったにしても、その数秒後にピアノの音が聞こえた瞬間、私はそれが上原歩夢/大西亜玖璃の声である事を確信した。
「今何が起きた!?!?」というのが、当時の感覚である。すごいとか、ありがとうとか、そういった感情も超えて、「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」という枠すらも超えて、ラブライブ!シリーズというコンテンツの持つ恐ろしくもあり美しくもある奇跡的な瞬間に立ち会ってしまったような感覚を覚えた。
確かに、私はAqoursという枠に留まらず、ラブライブ!シリーズ全体の中で桜内梨子/逢田梨香子が好きだし、シリーズでは2番目、虹ヶ咲という括りの中では1番上原歩夢/大西亜玖璃が好きだ。
だからこそ、推し贔屓と言われれば確かにそうかもしれない。
そこに何らかの運命や繋がりを感じるのは、単純にそれだけのお話なのかもしれない。
でも当の本人が、全てに意味があると思う事を素敵だと言っていたから、その目に見えない繋がりもきっとあの場所にあったのかもしれない。
ラブライブ!フェス以降、逢田梨香子と大西亜玖璃は急接近し、今やジョークを飛ばされるような仲になっているし、スクスタの物語内でも桜内梨子と上原歩夢の繋がりは他の先輩キャラと比べてかなり濃密で。
darkphoenix505pianoles.hatenablog.com
桜内梨子/逢田梨香子から上原歩夢/大西亜玖璃へのライドウォッチバトンの継承。グループを越えて受け継がれる輝き。そんなものを普段から感じながら追いかけてきたからこそ、あの瞬間その全てが結びついたような気がした。
かつてピアノから逃げ出して、それでも仲間の支えでまた大好きなピアノに向き合うことができた桜内梨子。その桜内梨子から勇気のバトンを受け取った上原歩夢。
その上原歩夢/大西亜玖璃が、かつての桜内梨子/逢田梨香子と同じようにピアノに向き合う高咲侑/矢野妃菜喜の危機的状況をひっくり返し、『夢がここからはじまるよ』を大成功に導いた。
あなたが私を支えてくれたように、あなたには私がいる。
そこに上原歩夢という概念が顕現しているかのような完成度が高いパフォーマンスをするだけでは飽き足らず、本当にこの言葉の説得力を「証明」してしまった。
だいじな夢追うとき
だいじなひとがわかる
想いはひとつだよと
違う場所へ向かうとしても信じてる
本当に、言語化して見ても首をかしげてしまうほど凄いものを見た。そんな気がする。
歌うたびに生まれ変わる曲たち
DAY1のアンコール1曲目が『無敵級*ビリーバー』だったから、DAY2の幕間映像の時から既に多くの人が黄色のブレードを用意していた。
しかし、今回は『TOKIMEKI Runners』からのスタート。
前日の『無敵級*ビリーバー』をスキップする形となり、あれ?と思いつつ曲が終わると、まさかの2ndアルバムソロメドレーが始まる。
ここでは、『開花宣言』と『MELODY』について取り上げる。
『開花宣言』は、私が1stライブで上原歩夢/大西亜玖璃に惚れ込んだきっかけの曲で、ずっと聴きたかった曲でもあった。
ソロメドレーが始まった時、2曲歌ったせつ菜、かすみ、歩夢以外の6人だけなのかなと思って正直油断していた。
だからよく知っているキラキラとしたイントロが聴こえてきて、自分の座席のすぐ近くのトロッコに上原歩夢/大西亜玖璃が現れた時は、着席でなかったらその場でひっくり返っていたかもしれない。
ずっと見たかった、花ひらいた上原歩夢/大西亜玖璃による完成形の『開花宣言』。
darkphoenix505pianoles.hatenablog.com
本当にスクールアイドルフェスティバルの舞台のアンコールで見られるとは思っていなかったし、得意のロングトーンも、最大の武器である表現力も格段にパワーアップしていて。
あの上原歩夢/大西亜玖璃がついにここまで来たのだと思うと、とても誇らしかった。
『MELODY』については、アニメでせつ菜が両親と向き合っていない以上、この曲自体の説得力は薄いように感じるかもしれない。
それでも、媒体や表現方法が変わっても変わらない軸になる部分が「優木せつ菜」であり、キャラクターというものだ。
確かに、「あなた」と共に紡いだ「優木せつ菜が両親と向き合う物語」はそこになくても、「その物語によって描き出され産まれる優木せつ菜といつ概念」は別のアプローチで存在しうる。
私が今回披露された『MELODY』を見て感じたのは、上原歩夢/大西亜玖璃視点の優木せつ菜/楠木ともり像だった。
好きなこと 私だってここに見つけたんだ
力いっぱい頑張れるよ 本当の自分だから
このフレーズがほぼ決め手だった。 ずっと隠して見えないふりをしていたはずの、心の奥に芽生えていた気持ちに素直になろうと思った瞬間。
侑にとってのせつ菜は後述するChase!だが、きっと歩夢にとっては「なりたい自分を我慢しないでいいよ」の発展系であるこの曲に近いような。
誰よりも味方でいてほしいあなたへ
心の奥まで届きますように
今日も信じて歌うよ!
『自分の気持ちをあんなに真っ直ぐ伝えられるなんて、スクールアイドルって、本当にすごい』
走り抜けた想いが心を染めてまっかっか 涙飛んでった
道は不確かだけど好きだからできる
私らしく輝いていける気がして
「私らしく」という言葉。上原歩夢(と桜坂しずく)というキャラクターが、それを獲得するために長い間苦しんできた言葉だった。
スクスタリリースまで、彼女の最大の特徴である「主人公の幼馴染である事」を描く事ができず、リリース後も『開花宣言』や『Awakening promise』に辿り着くまで探し続けていた上原歩夢。
だからこそ、「私らしく輝いていける」道で、芽生えた大好きを追い続ける優木せつ菜の姿が、本当に上原歩夢視点の憧れの姿だなと思ったし、憧れたその在り方で進んでいく今の上原歩夢/大西亜玖璃の姿そのものだと思えた。
私らしく進もう 描いた未来
いつか いつか叶えよう・・・!!
光が差し込んだ
これから先もずっとステージを照らすように
強く願い込めた歌を あの空までほら届け!
「あなた」モノクローム
一回目の『NEO SKY, NEO MAP!』の後、OPEDカップリング曲を経た次に披露された『未来ハーモニー』にどこか懐かしさを感じた。「未来」を冠する曲なのに、ノスタルジーを感じてしまうような、不思議な瞬間だった。
DAY2も特に強烈にそれを感じた。私たちのいるアリーナから披露された2ndアルバムソロメドレーの最中、その正体に気づいたような気がしていた。
アニメ化という新しい未来を勝ち取った虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。その放送前、ちょうどスクスタの1stSeasonがひと段落着いたタイミングでの2nd LIVE『Brand New Story』。
それはある意味でこのコンテンツにとって狭間の時期だった。コンテンツ総体として、ここまで描き続けてきた物語の集大成であり、また全く新しい物語へと移行するための送別会だった。
そして、何よりそれは、アニメでの主人公である高咲侑/矢野妃菜喜のお披露目でもあった。今まで一緒に隣を歩いてきた虹ヶ咲の仲間たちを、「あっち側のあなた」である高咲侑/矢野妃菜喜に託すための儀式だ。
私たちはあの日、私たちの中にある「あなた」という存在を、高咲侑/矢野妃菜喜という1人の人格へと変換し、まるでライドウォッチを渡す自らの影だけを切り離して解き放つように、アニメと言う新しい物語へと送り出した。
アニメタッチの作画で描かれ、栞子加入時期にも関わらず9人曲である『未来ハーモニー』。
栞子よりすこし先を進む彼女たちは、あの曲を通じて一足先に世界を越えて、物語を越えて、アニメという新しい未来へと進むため橋を渡っていったのだろう。なぜかアニメ曲としてカウントされるこの曲はきっとそういう曲だと思っている。
アニメの物語、私たちの分身である高咲侑/矢野妃菜喜と紡いだ彼女たちの物語は、私たちにとって橋の向こう側の物語。だから私たちは、アニメと言う媒体においては橋の向こう側で夢を追いかける彼女たちと「あっちのわたし」をただ見ている事しかできなかった。
確かに、高咲侑/矢野妃菜喜は「あっちのわたし」であり、私の分身であるから、結局はアニメの物語も「あなたと叶える物語」ではある。
だが、高咲侑/矢野妃菜喜はもう一人のキャラクターとして人格を持ちすぎてしまった。「あっちのわたし」ではあっても、私たち「あなた」という総体の具現化ではなく、高咲侑/矢野妃菜喜という固有名詞になってしまった。
ライブが始まって前半でずっと見てきたのは、私たちではあるけれど私たちの総体の具現化ではない高咲侑/矢野妃菜喜の物語。2ndまでの「あなたと叶える物語」とは少し違った、『未来ハーモニー』という橋の向こう側の景色。
橋の向こう側で私たちの分身が紡いできた物語を、オリジナルが分身目線で見ているような、そんな不思議な空間だった。
でも、『未来ハーモニー』という橋は一方通行ではなかった。
『未来ハーモニー』を披露した後、一度下がった彼女たちがもう一度登壇して披露したのは、『無敵級*ビリーバー』、『TOKIMEKI Runners』、2ndソロメドレーと、私たちが「あなた」として歩み、その中で辿り着いた楽曲たち。
私たちのよく知っている彼女たちがこっち側に帰ってきてくれたような、そんな印象を受けた。
橋の向こう側でアニメと言う新しい物語を紡いできた彼女たちがこっち側に帰ってきて、少し違った文脈を基にかつての歌を披露する。この歌うたびに生まれ変わっていく曲たちが、とてもラブライブ!シリーズらしいとも思ったりもした。
さて、こうして橋の向こう側から帰ってきたのは、虹ヶ咲の9人だけではない。私たちの分身、「あっちのあなた」として送り出した高咲侑/矢野妃菜喜も、役目を終えて私たちの中へ戻ってくる。
それは私たちの分身、「あっちのあなた」と呼ぶにはあまりにも人格を持ちすぎていて、「こっちのわたし」とはまるで別人物。もはや「わたし」だと見なすことはできないぐらいに、彼女は高咲侑/矢野妃菜喜になってしまっていた。
それでも、高咲侑/矢野妃菜喜の物語を軸に披露されるかつて「こっちのわたし」と共に紡いだ物語の楽曲たちは紛れもなく本物で、全く違うものに生まれ変わったとしても、高咲侑/矢野妃菜喜は「こっちのわたし」だった。
軸になる物語は違っても、今はまだ後ろを走っている三船栞子/小泉萌香も含めた10人、いや、28人と共にスクールアイドルフェスティバルを実現させた「こっちのわたし」の物語の中で私たちの瞳に映った景色、触れてきた想い、追いかけてきた夢は、変わらないまま「あっちのあなた」の物語の中でも輝きを放っていた。
とても歪な構造だ。私たち「こっちのわたし」から分離し、「あっちのあなた」から完全に高咲侑/矢野妃菜喜として変容を遂げた存在、「こっちのわたし」ならざるものを、私たちは自身の互換として認識し、帰還してくることを許してしまっているのだから。もとあった場所には全くはまることができないぐらいに、全く違うものであるのにも関わらず、だ。
だが、私自身はそんな歪な構造、「こっちのわたし」が「あっちのあなた」ならざる高咲侑/矢野妃菜喜という存在を「わたし」として還元してしまう構造も悪くないと思う。
ライブの最後の最後に披露された『NEO SKY, NEO MAP!』で、黒の傘を持って登壇した高咲侑/矢野妃菜喜の姿を見た時、どうしようもないぐらいに、私は彼女を「わたし」だと認識せざるを得なかった。
さあ日々冒険の それぞれの地図
同じものはないね きっとないね
夢の色は違うけど 想いは一緒だよ
熱く一緒だよ!
結局、夢の色も辿る地図も違ったとしても、高咲侑/矢野妃菜喜は私たちと同じ熱い想いのままに走る「あなた」である事に変わりはないのだ。
2回披露されたた『NEO SKY, NEO MAP!』。1回目はアニメの文脈をなぞるものとして披露されたが、2回目は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会というコンテンツの総体、「あなたと叶える物語」というコンテンツがそうあり続けるためのものだった。
ただのライブのエンディング*2ではなく、例えどこでどんな夢を追いかけようとも、彼女たちは手の届かない伝説でもずっと先を走り続ける挑戦者でもなく、隣を走る仲間でライバルであり続ける事を約束した瞬間だった。
高咲侑/矢野妃菜喜の物語も、「こっちのわたし」の叶えた物語も、すこし違う地図を辿っていたとしても、結局は同じように「あなた」としてトキめくままに、君と一緒に走っていくだけ。
夢見て 憧れて
また夢が見たいんだ
見たい 見たいんだ!
「こっちのわたし」の方に帰ってきた彼女たちは、2022年にはアニメ2期というまた新しい音に誘われ、橋の向こうに駆け出していくだろう。
それまでは、「こっちのわたし」が頑張る時間。
「わたし」とは違う人格を持ってしまった、「わたし」の中の高咲侑/矢野妃菜喜に苦笑いしながら、また彼女にあっちがわを任せるその日まで一緒に「あなた」でい続ける。
それにしてもまったく、想像もできないぐらいどんどん先に進んでいって、「わたし」のくせに暴れん坊になったなあ、少しは大人しくしろよと思わない事もないが、結局そう思うのも、そうできないのもどちらも「わたし」なのだろう。
世界が色づいて光りだす瞬間を見た。
本題。
「こっちのわたし」の物語が、「あっちのあなた」の物語と互いに共鳴し合う場だった3rdライブ。
そこで、「こっちのわたし」たちが目にしたのは、「あっちのあなた」の瞳に映った世界、高咲侑/矢野妃菜喜が感じたトキメキそのものだった。
ソロパートのトップバッターであり、作中では上原歩夢/大西亜玖璃と高咲侑/矢野妃菜喜の『はじまりのトキメキ』となった、優木せつ菜/楠木ともりの『CHASE!』。
舞台演出はこれまでのライブと比べれば控えめで、炎こそ使ってはいてもステージ全体は暗いまま。
本人も葛藤中のせつ菜の『CHASE!』だと語っていたように、今までの、特にラブライブ!フェスの虹ヶ咲のトリとして出てきたあの時程の迫力は無かった。・・・終盤までは。
世界が色づいて光りだす瞬間を
君と見たい その心がアンサー
生まれたトキメキ・・・
あの日から世界は、変わり始めたんだ!
侑がトキめいたあの瞬間に、突然真っ赤な光に染まるステージ。先程までの抑え気味の演出が嘘のようにステージを駆け巡る閃光、凄まじい勢いで空を焦す焔。
完全に、経験した事のある光景だった。
ある人は校内マッチングフェスティバルで。ある人はは1stライブ、ある人はラブライブ!フェスで。もしかしたらそれは2ndライブかもしれないし、シャッフルフェスティバルだったかもしれない。
高咲侑と同じように、あの日あの瞬間かもしれない。
誰しもがどこかで味わってきた、優木せつ菜/楠木ともりの咆哮に圧倒され、ただただひれ伏すしかなかったあの瞬間。
本当は今までよりそのシャウトは抑えられていて*3、パフォーマンスの迫力自体は実はそれほどでもなかったかもしれない。
それでも、暗く色のない世界が色づいて光りだし、あの日の侑と同じように私たちへと襲い掛かってくるその瞬間が確かにそこにあった。
そして、それは後に続く他のメンバーの舞台でも同じだった。
今回のライブのように、作中でも実際にステージに立って曲を披露した後半メンバー、天王寺璃奈/田中ちえみ、近江彼方/鬼頭明里、桜坂しずく/前田佳織里、朝香果林/久保田未夢ら4人は、彼女たちと同じ色の輝きを放つ舞台に飛び込んで。彼女たちを導いたトキメキに輝く世界を完全に自分のものとしていた。
そして、舞台のない場所を一瞬で自らのステージに変えて見せた前半メンバー、上原歩夢/大西亜玖璃、中須かすみ/相良茉優、優木せつ菜/楠木ともり、宮下愛/村上奈津実、エマ・ヴェルデ/指出毬亜ら5人。
後半4人は、確かに私たちは舞台を見上げる観客だったかもしれない。しかし、前半5人のステージは、舞台を見ていたはずの私たちは、確かに舞台ならざる場所が舞台へと作り変えられていく瞬間に立ち会っていた。
私たちは、あの時確かに西部球場ではなく東雲の階段の上にいる上原歩夢/大西亜玖璃を見上げていたし、彼女の歌声と共に2人だけの世界がライトピンクに染まり、西武球場というスクールアイドル上原歩夢/大西亜玖璃の舞台へと移り変わる瞬間を目にしていた。
言ってしまえば、ただのライトにすぎないこの演出。しかし、『夢がここからはじまるよ』で、「あなたのための歌を」という言葉と共にステージから私たちの方を照らしたあの光を忘れてはならない。
きっとあの瞬間と同じように、私たちがこのライブで目撃したのは、ライブと言うスクールアイドル最強の武器によって、わたしと彼女たちの世界が色づいて光りだす瞬間だった。
そんな瞬間を、高咲侑/矢野妃菜喜と同じように、いや、高咲侑/矢野妃菜喜が同じように体験できたこと、それがこのライブがラブライブ!のライブたる最大の理由なのかなと思ったりもしている。
あとがき
ライブ記事を書くのはなかなかに労力を要する。
ライブ中はインプットに専念しているため基本的に終演直後は感情が無、そこから少しずつ追い付いてきた感情をメモしておき、後からその感情の原因となった事実、それによって揺れ動いた心の変化を逆算し解析していく作業を要するわけだが、これがなかなか難しい。
そもそも、ラブライブ!は
言葉じゃ足りないから歌に乗せるんだ
ともあるように、言語表現に頼らない表現手段を複合的に多用するコンテンツであり、それを言語と言う媒体のみですべて語ってしまおうという試み自体がある意味では破綻した行為ではある。
しかし、そうした試みこそが、わたし個人(=あなた)としての在り方であり、侑が彼女自身のトキメキを音に乗せようとするように、私も私自身のトキメキを文字に乗せようとする。
不完全ながらもそうせざるを得ない、いや、そういった表現手段を選んでいるのが、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の「あなた」である私の在り方である。
だからこそ、是非その言語と言う表現の外にある感覚、感情、景色、そしてトキメキを探りながら読み進めて頂けると幸いである。
さて、この3rdライブ開催にあたり、寄せられた想いは決して明るいものだけではなかったはずだ。
先日中止が発表された、本来3rd一週間前に開催されるはずだったAqoursのつま恋ライブは既に延期が発表され、また2日前に有観客で開催されるはずだったLiella!のリリースイベントも無観客での開催となった。
アニメという物語を軸に置いている以上、少し後ろを走る三船栞子/小泉萌香や、まだ合流していない鐘嵐珠/法元明菜、ミア・テイラー/内田秀らの参加もない。
時勢によって、ライブに参加したくても参加できない人たちもたくさんいたはずだし、普段通りなら一般抽選もあり、あの会場には本当はもっとたくさんの人が訪れていたはずだった。
悔しい思いや、やりきれない想い、たくさんの傷ついた心。
消えていったたくさんの輝きが涙に変わる中、ラブライブ!シリーズが何とか守り切った、それが虹ヶ咲の3rdライブだった。
誤解を恐れずに書くなら、私にとってのラブライブ!シリーズの1番は虹ヶ咲ではない。シリーズで1番好きなキャラクターは桜内梨子だし、それは今の私の進路を形作っているものだから絶対的なもので、2番目の上原歩夢が1番になることは絶対にありえない。
だから、私にとってずっと前を走り続けていて、いつか叶えるべき夢の象徴でもあるAqoursのライブが無くなった事は本当に辛いし、『smile smile ship Start!』が今聴けないぐらいに傷ついてはいる。
でも、そんな状況だからこそ、ずっと一緒に隣を歩いてくれる虹ヶ咲とポケモンというコンテンツが本当に心の支えになっているし、虹ヶ咲、特に上原歩夢/大西亜玖璃がいれば何があってもラブライブ!は大丈夫だと、壊れそうな世界の中でも安心して生きていく事ができる。
私は桜内梨子の狂信者だから、全てに意味があると思えば素敵だと思うし、「出逢いってそれだけで奇跡」だと思うから、だからこそ今虹ヶ咲だけが奇跡的に私たちの前で歌を届けることができた事は絶対に何か意味があると思うし、いつの日にかそれが奇跡の始まり、彼女たちのトキメキの証になっていて欲しいから、
これからも、躓きそうになることはあると思うけど・・・
あなたが私を支えてくれたように、あなたには私がいる。
あの日彼女たちが私たちに届けてくれたこの言葉が少しでも多くの「あなた」へ届いて、前を向いて生きていく事ができるように心から祈っている。
*1:この楽曲は作中で複数回使用されており、その中で、12話と13話で使われた際は実際のOSTの音源通りではなく、一部カットされたパートが存在する。
ここでは一瞬戸惑うように入るピアノとヴァイオリンの音は完全にカットされ、ヴァイオリンがピアノソロを支えているかのような印象を受ける。
トキメキの音を探して。 - #てつがくのドンカラス
*2:そもそも私はこの曲を既存作品のエンディングの系譜というよりもむしろ『太陽を追いかけろ!』に近しいものを感じている
*3:MCにて、今回の『CHASE!』は葛藤中のせつ菜の心情に合わせて披露したとの言及があった。