#てつがくのドンカラス

それでは皆さん元気よく!不意打ち追い討ち?桜内!得意な技は?タイプ不一致!

『知らない』からこそ、『かもしれない』を忘れないと言う事。

 ちょっとみんなの論調が気になったので書きました。

 ラブライブ!のみかんの話についてではありますけど、でもそれに限った話でもないと思います。

 

・原因だと断じるのは難しいということ。

 

 「この表現によって傷ついた人がいるから〜」。この主張自体の妥当性は後で触れるとして、これって証明できないんですよね。「俺は傷ついていない」にも同様の事は言えるんですけど。

 本当に傷ついたのか、傷ついていないのか。そこを言い出したらキリがありませんし、それを説いたところであまり実りがあるとも思えないので、本題に。

 その「傷ついた」という結末に至る要因として1つの表現があったとしても、根本的に本当にその表現が理由なのかまでは分からないんですよね。

 ありがちなのが、実は傷ついた直接の原因は、作品に内在するものではなく、作品を自分が読み取った結果として現れたものにあるという事。

 ベクトルは違いますが、作品を見て「◯◯を思い出して泣いた」*1なんてその顕著な例ですね。あくまで作品は自分の感情を動かすトリガー以上の価値を持たず、感情のベクトルは自分自身の中で産まれたものでしかない。果たして、そのトリガーでしかないものは原因だと本当に言い切れるのか。私は傷ついた人間ではないので分からないですし、傷ついた人自身も傷と向き合うのはエネルギーを使う事なので、『分からない』事ではあるのですが、分からないって言うことは、もしかしたら違うかもしれないんですよね。

 まあ、この辺りを証明するために、法っていう基準があるのだと思います。

 

 

・解決策は本当に正解なのかと言う事。

 例えば、「差し替えるぐらいなら誰も損はしないんじゃない?」という意見。

 

a16777216.hatenablog.com

 論理的には、何の問題もなく、むしろ正しいと思うんです。

 確かに、問題が本当に「ラブライブ!を馬鹿にされたくない人」vs「女性を性的に消費されたくない人」なら、いうことは何もありません。

 ですが、だからこそ、「差し替えることで困る人間がいるのかもしれない」という可能性も考えてもらいたいと思っていて。

 例えば、私たちは困らないにしても、イラストレーターは困りますよね。一度提出し発表したイラストを取り下げられたわけですから。プライドもズタズタでしょうし。以降のお仕事にも響くでしょう。このイラストが「明確に悪」であると証明ができるならそれも仕方ありませんが、不可能でしょうね。

 まあ、自分の作品の評価だから、仕方ないよねって話ではありますけれど、そうなると他のイラストレーターさんも困るわけで。ここではクレームの正当性はあまり関係ありません。次は自分がクレームで作品を潰されるかもしれないという不安が産まれるかもしれません。コンテンツは自分の作品を守ってくれなかったわけですから。

 また、ファンの中にも困る人はいますよね。これは御幣を産む言い方をすれば、「ラブライブ!が好きな人」です。逆に言えば、ラブライブ!でないものに興味がない人。

 イラストが仮に差し替えになったとして、それは「ラブライブ!ではないもの」の意見が反映されたことになります。そういう人(筆者は実はそんな感じです)は、クリエイターに求められる以上の作品への介入を嫌います。それがどんなに枝葉末節なことであったとしても。そういう人の判断基準は、「良い悪い」ではなく、「クリエイターの作ったものかどうか」なのです。自分にとって理想を実現してくれる完璧なコンテンツは、他人の世界ではなく自分の中にしかありませんから。ですから、クリエイターの純度百パーセントの世界に浸っていたいし、それが合わなければ去る。そういう人です。

 私が死ぬほど嫌いな漫画に『テコンダー朴』がありますが、気に入らないからっていってあの漫画を自分の思うように改造するのって、もうそれ『テコンダー朴』である必要がないでしょう。

 だから、考え方が正しくても前提が抜けていることって、見落としがちなんですよ。

 今回の件は「オタクvsフェミニスト」みたいな二項対立に捉えられがちですが、そうした前提を「間違っているかもしれない」と考える視点も必要だと思います。いろんな人がいるわけですから、それが綺麗に二分されるはずがない。全く同じ意見はあるかもしれないけれど、それでも全員が同じ意見なんてありえないわけです。

 今回、私は違う立場を示しはしましたが、別にこの立場も立場として正しい理由はありません。間違っているかもしれない。ですが、これはあくまで一例であり、「みんな」という言葉の中にはいろんな立場があることは常に頭に入れておいて貰いたいです。

 もしかしたら、「みんな」の中にはあなたの想定する答えの例外になり得る人が存在するかもしれないから。

 

・解決する必要があるのかという話

tegi.hatenablog.com

 

 私、今回の争点で指摘すべき点はこの記事をよんですごく納得はしましたし、ぶっちゃけ私のこんな文章なんかよりこれ読んどけって思ってます。ここで取り上げられている問題、仮に問題だとしても、解決しなくてもいい問題かもしれません。

 たとえば、ゲーム等で弱点を潰すより長所を伸ばした方が圧倒的に強かった事ってありますよね。勝てない相手の対策をするより、マッチしたら負けと割り切って他の対面で勝てるようにした方が勝率が良かったりしますよね。

 これって、『問題を解決することによって得られるリターン』と、『問題というデメリットを抱えながら打ち出した物から得られるリターン』を比較して、後者の方が大きかったっていう事なんですよね。

 また、そもそも問題を解決するコストとリターンが釣り合わないかもしれません。果たして、多方面への配慮というものは、一度打ち出した物を取り下げてまで行うべきものなのか。

 また、問題だと主張し取り下げさせたとしても、それって女性の権利を守りたい人からしてもどうでもいいよねって思います。「女性の権利を守る」という目的の達成において、それは全く機能しないかもしれない。むしろ、裁判で訴えた方が遥かに合理的かもしれない。だから、そうした人たちにとっても、実は受け入れられる必要も取り下げさせる必要も意味がないのかもしれません。

 まあ、このあたりの匙加減を決めるのが「運営」することですよね。それがどういう計算の元、何を目的として行われているかを私たちは知ることは無い以上、もしかしたらこの問題も計算済みなのかもしれませんよね。

 

また、そもそもえっちなものはよくないという前提って、おそらく万人に共有されているわけじゃないかも知れません。「えっちで何が悪いんだ!」って思う人だっているかもしれません。だから、「えっちな絵を使うのはよくないよ!」って主張する時、えっちだとどうしてダメなのか、一言補足してあげるといいかもしれません。

 まあ、そもそも、それをえっちだと思う感覚が間違っているのかもしれませんし、えっちだと思わない感覚も間違っているのかもしれません。間違っている、というより、「妥当でない」のほうが適切ですね。別に、「私の感覚」は絶対的な根拠にはなりませんよね。

 

 

・そもそも争点が違うのかもしれないという話

 「千歌ちゃんのえっちな絵はよくない」という主張、前提としているものは「さ、桜内さんが悪いんだぞ!えっちな身体で誘いやがって!」っていうのと同じなんですよね。

 要は、「私はあなたを卑猥だと感じた」というところまでは、フェミニズムによって非難されるべき主張と同じなんです。他人に「えっちだ」というレッテルを張っているんですよね。だから、本当に主張したいことって、先ほどの例の前者と後者の決定的な違いである『性的に“消費”』ですよね。そうじゃないと矛盾しますから。

 それに対して反論するなら、「消費していない」が正しいですよね。まあ、この話をするなら「消費」という言葉の定義を考えなければならないのではありますが。

 とにかく、意見を聞くときは、何が相手の主張なのかをきちんと理解することが大切です。実は相手の主張と、それを聞いた自分の理解が食い違っているのかもしれませんから。

 

 

・相手も正しいかもしれないという事

 「人を殺してはいけない」と「人を殺した人は死刑にする」って、矛盾しないんですよね。同様に「結婚したい」と「あなたを殺す」も、両方とも「私はあなたが好きだ」ということの結果として存在しうるんです。また、「あなたを殺す」理由も、「あなたが好きだ」からだけじゃない。「あなたが嫌いだ」「そこにいたから」もありますよね。

 だから、自分の主張する意見が正しい(もちろん、本当に正しいのかどうか一度考えてもらいたいですが)としても、それと真逆の意見が間違っている理由にはなりません。だって、相手も正しいかもしれないじゃないですか。

  今回、「弱いものを守るのが正しいことだ」「自分たちの領域を守れ」という正義の旗を掲げて、強い言葉で相手を非難する声がとても多く聞こえます。だから、「もしかしたら自分が間違っているかもしれない」「相手も正しいかもしれない」という事は、胸の片隅に持っておくといいかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 広く色んなものを「私の意見」ではなく「〇〇の意見」として、納得しなくてもいいから理解しておくこと。常に自分の見える物だけで考えることなく、自分が知らない物だってあるかもしれないということ。みんながそうやって、発信する前に一呼吸おいてくれたなら、少なくとも今傷ついている人、傷つけた人の何人かは分かり合えるんじゃないかなと思います。

 

*1:例えば私は無印の劇場版の穂乃果が飛行機を見上げるシーンで毎回ラティオスを思い出すわけですが、明らかに根本的な原因は私自身にあるわけですよね。