#てつがくのドンカラス

それでは皆さん元気よく!不意打ち追い討ち?桜内!得意な技は?タイプ不一致!

なぜ上原歩夢ちゃんは虹ヶ咲の代表なのか

 μ'sのリーダーは高坂穂乃果Aqoursのリーダーは高海千歌。だから、それぞれのグループの代表として扱われる事に特に不思議な事は無い。

 ラブライブ!フェスの最後の挨拶では、1日目は高坂穂乃果役の新田恵海さん、2日目は高海千歌役の伊波杏樹さんが音頭を取っていた。そして、その時、虹ヶ咲を代表して挨拶していたのは、上原歩夢役の大西亜玖璃さんだった。

 

 でもよくよく考えると、虹ヶ咲って穂乃果ちゃんや千歌ちゃんみたいなリーダーはいないから(強いて言うなら部長である私たち)、当然歩夢ちゃんがリーダーだとかそういう事ではなくて。

 歩夢ちゃん自身も、穂乃果ちゃんや千歌ちゃんみたいにみんなを先頭で引っ張っていくタイプでもないし、実は2人と歩夢ちゃんって、共通点って意外と少なかったりする。だから、今回はそんな彼女がどうして主人公二人と共に代表になっているのかについて考えていく。

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先代2人と比べて

 「物語の主人公」だった2人と違い、歩夢ちゃんは「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の物語」の主人公ではなかった。むしろ、そうした先代主人公の系譜は、同じく主人公であるあなたが引き継いでいる。

千歌「だって、私たち共通点があるもん」

穂乃果「うん!私たちみんな、スクールアイドルが大好きで…」

千歌「仲間の事が大好きってこと!」

(中略)

穂乃果「なんか不思議だよね。私たちより先にいたスクールアイドルに、憧れて、追いかけて」

あなた「そうやって、ずっとこのあとも続いていくんだろうね」

千歌「私たちはμ‵sに」

あなた「私はそんなAqoursμ’sに感動してみんなの夢を応援したくなった」

穂乃果「こうして後ろから誰かが追いかけてきて」

千歌「隣に並んで」

あなた「同じ方向に向かって走り続けていく仲間がいるって、すごく幸せで、心強いことだよね!」

 

スクスタ第8章『夢への一歩を抱きしめて』第3話『私たちの共通点』

 

曜「先頭で元気よくみんなを引っ張っていくところは、あの三人よくにてるよね?」

かすみ「そいえばそうですねぇ」

歩夢「あの子は…リーダーとして、誰よりも向いてると思うんだ。

   私や、みんなを大切に思って、支えてくれるから…」

 

スクスタ第8章『夢への一歩を抱きしめて』第4話『大好きだから仕方ない』

  この時、歩夢ちゃんって、主人公組じゃなくて、どの主人公が一番か喧嘩してる組にいる。敢えて既存の分け方に当てはめるなら、歩夢ちゃんは主人公2人よりもむしろ4話で一緒に登場したことりちゃんや曜ちゃんと近い立ち位置だ。主人公の幼馴染で、一番最初の仲間で。スクフェスで初めて実装された時だって、歩夢ちゃんはことりちゃんや曜ちゃんと同じく「ピュア属性の2年生」だった。

 

 ラブライブ!三昧2019のリーダー座談会でも、穂乃果ちゃんや千歌ちゃんはリーダーとして挙げられていたけど、歩夢ちゃんは確かアイデアメーカーだったような。(ここは不確かなので間違ってたら教えてください。)

 もう少し踏みこんで、先代がどんなリーダーだったのかも見ていこう。表面的には異なっていたとしても、本質的には歩夢ちゃんはリーダーのような機能を果たしているかもしれない。

 

blog.livedoor

 穂乃果が大勢の人達からかくも助けを得られたのは、間違いなく彼女が自分の力の限界を理解し、大きな業績を挙げるためには仲間やメンバー達の力を生かす重要性をよく理解していたからでしょう。

 しかも、ただ仲間に頼るだけではなく、その特徴や性格、長所等をよく理解し、それをうまく引き出す才能に恵まれている

tsktktk.hatenablog.com

千歌は『足りない子』なんですよね。だから『求める』。

その意思が前に進む原動力となる。超えられない壁にぶつかる。

だから『皆が支える』。

千歌の足りない部分を補い、千歌も誰かの足りない部分を補う。

そうして千歌を中心に皆が繋がり、一つの輪ができる。

 

 こうしたリーダーらしさが歩夢ちゃんに無いとは言わない。むしろ、歩夢ちゃんは自分が足りていない事を自覚しているし、他人に頼ることもできる。特に、あなたっていう万能キャラに頼れるのは先代2人ですら羨んでいた事だった。だが、やっぱり虹ヶ咲の物語のなかでこうしたリーダーシップを振るうのって、結局はあなたである。

 どうしてこうなるかを考えると、歩夢ちゃんにリーダーシップを執る才能があるとしても、それを発揮する場が虹ヶ咲の物語の外にあるからだ。歩夢ちゃんが何かを決断してゴールを目指していくとしても、穂乃果ちゃんや千歌ちゃんはそれがグループ全体の目標になるけれど、歩夢ちゃんはそうじゃない。みんなを導けるのは今のところ歩夢ちゃんの物語の中だけで、虹ヶ咲の物語ではグループの一員に過ぎない。逆に言えば、虹ヶ咲の物語の中では、歩夢ちゃんは先代のようなリーダーである必要がない。

 

 こうして見てみると、歩夢ちゃんは少なくとも「穂乃果ちゃんや千歌ちゃんと”並ぶ”主人公」ではないかもしれない。

 

そもそも、先代とは違うということ

 系譜というものを考えるのにあたって、それがどのように引き継がれたかはきちんと注目すべきことで。μ’sAqoursの関係だって、別にAqoursμ’sの意思を継ぐ後継者ではなかったはずだ。

 2グループの関係はあくまでもコンテンツの初代と2代目というだけの話。千歌ちゃんだって、『スクールアイドルに恋してる』だけであり、μ’sの意思だとかそういうものに感銘を受けたシーンは無かった。Aqoursの輝きはμ’sのそれとは全く違うものだったし、先日のラブライブ!フェスでは、Aqoursμ’sと並んでトリを任されたレベルだった。それはまあ同じコンテンツだから、バトンを繋ぐという表現は間違ってはいないけれど、それでもAqoursの物語はμ’sの続編ではないから、正確な意味ではAqoursって、2代目ではありラブライブ!の後継者ではあるけど、μ’sの後継者ではない。

 

 でも、虹ヶ咲は、実際に再編されたμ’sAqoursの輝きを直接受け取った、本当の意味での後継者だった。あなたは第3章から第6章の中で、逆境の中でも諦めずに戦い抜くAqoursの姿と、それぞれが目標のためにできることを分担して進んでいくμ’sの物語を一番近くで見てきた。それはアニメ等ほかの媒体で描かれてきた彼女たちの輝きと何一つ変わることは無かったし、あなたも、ただ先代としてリスペクトするだけでなく、そうした中から自分たちらしさを見出そうとした。

 

 となると、虹ヶ咲はラブライブ!としては3代目ではあるけれど、物語としてはμ’sの2代目、Aqoursの2代目と言えるのではないかという事。そういう事なら、穂乃果ちゃん、千歌ちゃんと歩夢ちゃんが並んでいる意味も変わってくるかもしれない。

 

 

後を継ぐという事

 さて、虹ヶ咲が先代2グループの後継者であると仮定したところで、後継者の代表とはどんなキャラクターであるべきなのかを考えてみる。

 

 これはμ's、Aqoursそれぞれの物語の中にも存在した。μ'sは花陽ちゃんと凛ちゃんにそれぞれ引き継ぎが行われ、Aqoursはルビィちゃんがグループを引っ張っていた。

 どの子たちも、最初は主人公らしくはなかった。先頭で引っ張っていくには引っ込みがちで、臆病な子たちだったけど、1年を通して見違えるぐらい大きくなっていた。

 花陽ちゃんは2期13話『叶え!みんなの夢__』では穂乃果ちゃんを(物理的に)引っ張るだけのパワーを見せていたし、凛ちゃんなんて、1年生の代表としてニューヨークでは成長した姿を見せてくれていた。

 ルビィちゃんなんて顕著で、他のグループすら味方に付けて。劇場版なんて、ついに2年生を追い越してみんなを引っ張っていて。

 

 この子たちって、穂乃果ちゃんや千歌ちゃんがそうだったように誰かに助けられながら走っていく子ではあるけれど、同時に誰かの助けになれるような子だ。

 μ'sの1年生が互いに背中を押しあったり。ルビィちゃんは花丸ちゃんの後押しでAqoursに入ったけど、ちゃんと先輩達に追いついてから花丸ちゃんを迎えに行ったし、ライバルの理亞ちゃんに手を差し伸べたり。

 最初から主人公だったわけではなく、むしろサポート役だったが、物語の中で成長し、穂乃果ちゃん、千歌ちゃんの物語の中で、彼女たちを引っ張っていけるような存在になる。

 

 そう言う子が、物語の後継者だと考えると、μ's、Aqoursの後継者としての虹ヶ咲の代表って、穂乃果ちゃんや千歌ちゃんみたいなタイプじゃなくて、むしろ凛ちゃん、花陽ちゃん、ルビィちゃんのような子が相応しいのかもしれない。

 Aqoursの物語は、μ'sが「輝いていた」事を前提に自分たちの道を進んでいったけれど、虹ヶ咲の物語はμ'sとAqoursの輝きそのものを前提としているから、花陽ちゃん、凛ちゃん、ルビィちゃんみたいに、輝きの物語の中で主人公に変わって行った人たちの物語だと言える。

 

 つまり、今虹ヶ咲の代表である歩夢ちゃんは、主人公として穂乃果ちゃんや千歌ちゃんと一緒に描かれはするけれど、系譜としては「穂乃果ちゃんや千歌ちゃんから物語を引き継いだ」花陽ちゃん、凛ちゃん、ルビィちゃんと並ぶ「2代目主人公」なのである。

 

 

2代目主人公としての歩夢ちゃん

 先代2人と比べて、あまり主人公らしさのなかった歩夢ちゃんだが、2代目だという前提の元この子をもう一度見ていこう。

 

 まず、先代のストーリーは、程度はどうあれ私たちに開かれた状態で次の世代に引き継がれた。

 μ'sは『スクールアイドルの素晴らしさ』を唱えμ's以外スクールアイドルの未来にもバトンを繋いだし、Aqoursはスクールアイドルでない人にさえも輝く資格があると唱え、スクールアイドルでない人、スクールアイドルではなくなった人の輝きを見つけてきた。

 ルビィちゃんが顕著だけど、それはμ'sやAqoursの物語の中で、μ'sやAqoursでない人たちに想いを馳せる事で。

 そういう未来に繋がるからこそ、花陽ちゃん、凛ちゃん、ルビィちゃんみたいに、他の誰かに寄り添える人に引き継がれていったのだと思う。

 じゃあ、虹ヶ咲でそうやって他の誰かに寄り添える子が誰かって、それは真っ先に出てくるのはあなたではあるのだけれど、そのあなたの幼馴染でいつも一緒にいてくれた子が歩夢ちゃんだった。

 幼馴染って、誰かにとっての『あなた』になれるという事で。『あなた』がスクールアイドルを一番近くで応援する存在だとするなら、凛ちゃんと花陽ちゃんはそれぞれお互いの事を一番近くで励ましあっていたし、理亞ちゃんを唯一理解していたのはルビィちゃんだった。3人とも、誰かの『あなた』になれるキャラクターだ。

 歩夢ちゃんも、あなたにとっての『あなた』になれるキャラクターで。あなたの1番の理解者だし、ことりちゃんや曜ちゃんがそうだったように、あなたがやりたいからっていうそれだけの理由でスクールアイドルになってくれた。あなたが倒れたらずっと付きっ切りで看病してくれるし、そして、あなたの決意を隣で聞いていてくれたのも歩夢ちゃんだった。

あなた「歩夢ちゃん、あのね、私、決めたよ!絶対に諦めない!」

歩夢「スクールアイドルフェスティバルを生き返らせる事ができるかな?」

あなた「うん!だって私たちにはこんなに励ましてくれる仲間や、先輩たちがいるんだもん!諦めてられないよ!」

歩夢「そっか…そうだよね!諦めることなんてないよね!」

あなた「それにはみんなの力が必要なの。歩夢ちゃん、手伝ってくれる?」

歩夢「もちろんだよ!私はどんなことでもあなたの力になるよ」

スクスタ第8章『夢への一歩を抱きしめて』第8話『朝日の中の決意』

 このあなたとは、私たちプレイヤーの分身である。(それはそう)私たちは元々はμ'sでもAqoursでもない存在だった。でも、μ'sでもAqoursでもない人たちの輝きの可能性を唱えて引き継がれたからこそ、引き継がれた主人公は、私たちに手を伸ばす役割を持つわけで。

 だから、『あなた』を中心に描かれる物語である虹ヶ咲の代表は、私たちにとっての『あなた』である歩夢ちゃんでなければならないのだ。

 

 

 

あなたの夢を背負う存在としての歩夢ちゃん

 穂乃果ちゃんも、千歌ちゃんも、それぞれの輝きへの答えとして『今が最高』『明日もきっと輝いてる』と唱えたわけだが、あなたはどんな答えを出すだろう?

 ステージに立たないあなたは、曲を必殺技とするこのコンテンツの中で、そうした答えを曲に乗せて打ち出す事ができないわけで。だから、物語を通して見つけた答えを誰かに託すしかない。

 

 そんなあなたの物語の中で、1人だけ「あなたのためにステージに立つ」子がいる。別に自分を犠牲にしてるわけじゃなくて、それはその子が1番その子らしくある事として。

歩夢「ええと…私の夢はステージに立つこと…」

歩夢「その…いつも私たちを影で支えてくれる人がいるんです。その人はスクールアイドルがとても好きで、スクールアイドルみんなを応援したいって、毎日頑張ってくれています。」

歩夢「その人が少しでも喜んでくれるなら、どんなことでも頑張れる気がします。それに、今がとっても楽しいから!だから、ステージに立って、その姿をみんなに見てもらいたいです。」

スクスタ第12章『前しか見えない!』第5話『あなたの夢はなんですか?』

 

 この子以外いないでしょう?確かに、私たちはそれぞれの1番好きなメンバーは違うし、その子たちの晴れ舞台での勇姿が見たいのはそうだけれど、物語の中の『あなた』の夢を託すのにこれほど相応しいキャラクターは他にいないでしょう。

 他の子たちはそれぞれ自分の夢や目標のためにステージに立つけれど、歩夢ちゃんの目標って、『あなた』の夢を叶えるため。『あなた』のために存在するようなキャラクターだから。

 

 サイドストーリーで、歩夢ちゃんは自分らしさとして、素敵なスクールアイドルになれるように成長していくところだって答えにたどり着いたけれど、それって、スクールアイドルを1番近くで応援する虹ヶ咲のストーリーそのものだ。

 

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 素敵なスクールアイドルって、悪く言えばすごく漠然としていて具体性に欠ける言葉で。でも、どうしてそんな言葉で描かれたかって考えると、やっぱり「素敵なスクールアイドル」そのものじゃなければいけないからって考えるのが自然だ。結果として素敵なスクールアイドルになるんじゃなくて、素敵なスクールアイドルそのものになるのが彼女の目標だからって考えると、それってやっぱり虹ヶ咲のストーリーそものもだ。

 メインストーリーでの『夢への一歩』が出てくるタイミングも象徴的で、『夢への一歩』→『TOKIMEKI Runners』、『朝日の中の決意』→『夢への一歩』、『夢への一歩』→『あなたの夢はなんですか?』  なんて、ソロ曲なのに虹ヶ咲のストーリーの中でしっかりと文脈を持っているけれど、それだって元々歩夢ちゃんがそういう立ち位置にいるからだろう。

 

 

歩夢ちゃんが開花するとき

 そんな、『あなた』の夢を背負った歩夢ちゃんが開花するとき。それは『あなた』の夢が叶うときだ。

 歩夢ちゃんの2曲目のソロ曲『開花宣言』では、成長した自らの事だけでなく、支えてくれた『あなた』も共に成長していくこと、歩夢ちゃんを見つけた『あなた』も幸せになる事まで言及されている。

 歩夢ちゃんが必殺技として『開花宣言』する時は、それはスクールアイドルを1番近くで応援してきた『あなた』の応援してきたスクールアイドルが、立派に輝いていることが証明される事になる。だからこの曲って、『1番近くで応援する』事に対するアンサーとなり得るのだ。

 先代が『やりたいから』→『今が最高』、『輝きたい』→『明日もきっと輝いてる』と答えを出したように、『応援したい』に回答があるとすれば、それはステージに立たない『あなた』ではなくきっと歩夢ちゃんを通して提示されるだろう。

 

 

 

 

 こうした事から、虹ヶ咲の代表とは、「穂乃果ちゃんと千歌ちゃんに"並ぶ"のではなく、花陽ちゃん、凛ちゃん、ルビィちゃんのように彼女たちの輝きを"受け継ぐ"者」であると言える。そして歩夢ちゃんがそうした存在になれるのは、「ステージに立たない『あなた』の夢を託される者」であるからだ。

 

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 3人のイラスト、穂乃果ちゃんと千歌ちゃんに背中を押されこちらに手を伸ばす歩夢ちゃん。

 これが、ラブライブ!の3代目、μ'sとAqoursを受け継ぐ次世代の主人公上原歩夢ちゃんなのである。