#てつがくのドンカラス

それでは皆さん元気よく!不意打ち追い討ち?桜内!得意な技は?タイプ不一致!

I will walk on my way with you, forever.

 透明感のある歌声と評されて活動を開始して3年。

 年齢の十の位が1大きくなった未来の声は、そんなに透明じゃないなと思った気がする。

 それと同時に、これが3年という月日の中で起きた変化、成長、挑戦といった、ありふれた言葉で抽象的に語られがちな概念が具体的にどんな形で現れているのか、なんとなく垣間見えたような気がした。

 

 透き通るような声と言えば聞こえがいいが、透き通るものといわれて想像するものは一体何だろうか?

 水や空気であったなら、それは素敵なものに聴こえるかもしれない。でも、幽霊やクラゲだって、透き通るものだという事ができる。境界線がなくて、曖昧で、そこにあるのかないのかよく分からない。

 そんな透明さも確かに素敵なものではあると思うけれど、だからこそ、『for…』が挑戦だったのも、なんとなく浮いている気がするのも、今となっては分かるなあという気もする。

 

 境界線、今日と明日、昼と夜。明白な境目をあいまいにする美しさもあるけれど、埋もれてしまったり、染まりきって消えてしまったり、そんな危うさも孕んでいて、それもなんとなく感じていた人もいるんじゃないかって、そんな気もしたりしなかったりする。

 

 透き通るような声、透明感のある声。活動の始まりのまっしろな地点も一緒に形容されているような、そんな声で歌い始めて、3年。

 まっしろ、無味乾燥と形容するには程遠いだけの声を積み重ねる中で、自分は何者か、逢田梨香子の歌声とは如何なるものか、そんな答えは、私たちが知っているのか知らないのかはともかくとして、この世界のどこかに解答は存在しているんだと思う。

 

 透明感の名残は感じつつも、CD音源とは別物の曲に聴こえるような『I will…』。何が違うんだろうと思っていたら、なんとなく声の輪郭や厚みを感じるような気がして。

 境目が分からない透明感の名残、こころの中にスッと入り込んでくるような、そんな滑らかさや柔らかさを残しつつ、3年前にはなかったような迫力、くっきりとした声の輪郭、そして、少しだけ音量を上げたバッキングトラックをも制して主張するだけの圧力。

 

 心に染み渡るような、そんなしっとりした部分はそのまま残しつつ、響き渡らせるだけのパワーが格段に違うなと感じた、そんなひとときだった。