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でもどうしても繋がりたいから! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2期2話『重なる色』

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 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会第2話『重なる色』を視聴した。

 

 これまで、私は虹ヶ咲を追いかける中で、「あなた」として、同好会個々との絆レベル、及びあなた/侑への感性の擦り合わせは行ってきてはいた。

 しかし、ユニットに焦点が当たるという事で、純粋に自分のこれまでの理解で読み解ける範囲が狭まることとなり、現在早急に各ユニット単位での絆レベルを溜めている最中である。

 

 特に、ラブライブ!感あふれるDiver Diva、(メンバーだけ見れば)同じくラブライブ!感のあるA・ZU・NA、ラブライブ!ユニット界最強のRE3BIRTHと比較して、解像度が低めなメンバーが多く、ユニットの特色も自分自身の好みとあまりマッチしていないQU4RTZが最初に来たことで、絶賛頭を抱えている次第である。

 

 これブログなに書けばいいの?

 

 

 

 

所属すると自由にやれないということ

 QU4RTZがどのようなアプローチを取るのかは一旦後回しにするとして、まずは嵐珠の主張と、彼女が吐いている嘘(正確には、エマ等がそのように受け取っているもの)を整理していく。

 

「あなたたちも同じスクールアイドルなのに、人の事ばかり気にして。私は自分の足で高みに登りたいの」

 

 この発言が出るという事は、嵐珠視点での同好会メンバーは他人の事ばかり気にしているため、自分のやりたいことが出来なくなっている人間である、という事になる。

 

 

 

 

 1話での彼女は、「ファンがアイドルを支える」という構図に異を唱えた訳だが彼女がそうした認識を持つようになった経緯として、侑が「スクールアイドルから夢を貰った」事と「だからスクールアイドルを応援したい」と語っていたことが挙げられる。

 

 決別のシーンで「あなたはどうして同好会にいるの?」と強調していることからも、嵐珠の主張の根拠となっているのが侑の存在であることは明白だろう。

 

 実際、侑がスクールアイドルから夢を貰ったとして、スクールアイドルを応援する事がその夢を叶える妨げになっては、貰った夢が叶う事は難しいだろう。だからこそ、夢を与える存在であるスクールアイドルが、夢を貰った人間を縛り付けてはならないのである。

 

 2話内でも、ミアの音楽的才能を描いているかのように見せかけつつ、音楽科で補修に掛かり、補修でさえも苦労する侑の姿が描かれている。*1

 

 このように、現時点での侑は、嵐珠の言うように、同好会に所属しているせいで自分の自由にできず、夢を追いかける事ができていない存在でしかない。

 1話では「やりたいことをやりたいって気持ちだったら、私だって負けてないつもり」と啖呵を切ってはいるが、「夢を叶えたいって“思ってる”」だけで、本当に「今はまだ全然」なのである。*2

 

 そんな侑がいる同好会に、果たして嵐珠が加入したいと思うだろうか?

 嵐珠が同好会に加入すれば、侑は嵐珠を応援する事にもリソースを割かなくてはならなくなり、結果としてそれはスクールアイドルが与えた夢をスクールアイドル自身の手で邪魔をしている事になるのだ。

 

 2話冒頭で嵐珠が断った合同ライブも同様だ。同じ規模のライブが自分自身で開催できるなら、それによって他の誰かを拘束する事、自分自身が拘束されることを嵐珠が受け入れるはずがない。

 

 

 侑が今のままでいる限り、たとえ何があったとしても、嵐珠にとって同好会とは「やりたいことを自由にやれない場所」であるだろうし、現状同好会メンバーがそれに気づいているにせよ、そうでないにせよ、避けては通れない問題となるだろう。

 

 

 

アニガサキが、キャラクターが出来上がる物語であるということ

 しかし、彼女はそうした場に好き好んで所属するメンバーたちに理解は示さないものの、スクスタのように自分が正しいと思う方向に導こうとすることもなく、むしろ彼女の態度は「あなた」に対して見せた、冷たさ、無関心さを想起するようなものであった。

 

 スクールアイドルとしての彼女たちのグッズを購入してはいるものの、それがライブ衣装であることも示唆的だ。現時点での嵐珠は、スクールアイドルとして舞台に立っているときの同好会にしか興味がない。

 

 だからこそ、主張したいことがあるならライブで証明して見せろと焚きつける。とても合理的な主張である。嵐珠はステージの上にいる人間の声にしか耳を貸そうとしないからだ。

 

 

 同好会が侑が自分の夢を追いかける上で現状負担になっているのにも関わらず、それを指摘こそすれど、嵐珠自身がそうした状況を変えようとすることもない。

 それに対し、スクスタでは彼女の視点で良しとしないやり方を続ける同好会に対して圧を掛け、よりよい手段で上を目指せるやり方に導こうとするような、受け取り側からしたら傍迷惑なお節介*3を焼くだけの優しさを持ち合わせている。

 

 こうしてみれば、アニメの描写からは、彼女の核である「同好会のみんなが大好き」という要素があまり汲み取れない。

 しかし、スクスタでは初めからボードをつけていた璃奈が、アニメ1期ではそれを手に入れるまでの過程が描かれたように、この作品ではキャラクターの要素の中でも、デフォルト扱いされている要素に焦点を当てることもある。

 

 現状、表面だけみれば同好会の事が好きそうに見えて、実はスクールアイドルではない個々に対してはそこまで好意を寄せているわけではなく、むしろ放置、無関心に近い彼女だが、もしかしたらこれから描かれるのは「嵐珠が同好会のメンバーの事が大好きになっていく物語」かもしれない。

 

 

既存のQU4RTZに嵐珠がトキメくか分からない、ということ

 さて、今回はそうした物語の対立軸にQU4RTZが選ばれたわけだが、既存QU4RTZの在り方を見ていくと、実は嵐珠の主張する「所属する事によって自由にできない」色が一番強いユニットであることが分かる。

 嵐珠の所属するRE3BERTHは別として、Diver DivaやA・ZU・NAの内、愛、果林、歩夢、せつ菜は、そもそも個々が他のメンバーに合わせる気がない。

 

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 Diver Divaは相手の事を食うつもりで自己主張をしていれば形になるし、A・ZU・NAはそもそも顔と身体だけのユニットも基本的にはバラバラにやりたいことをやっていれば形になるユニットである。*4

 しかし、QU4RTZに関してはそうでもない。調和が軸になっている彼女たちは、他2ユニットと違い好き勝手パフォーマンスする事はできず、常に他人に合わせて歌う事を要求される。

 

 

 

田中 私個人としては璃奈ちゃんとしてこの曲をどう歌えばいいのかを試行錯誤しました。ソロのときはメンバーらしさを念頭に置いていますが、ユニットはやっぱりユニットのカラーも出さないといけないと思って、レコーディングも時間がかかりました。

相良 QU4RTZって一体感が大事なユニットだろうなと思ったから、あんまり“かすみんかすみん”しすぎると、ひとりだけ違う曲を歌っているみたいになってしまって……。その塩梅が難しかったです。

指出 ハーモニーが大事な曲だと思ったから、個性を強く出しすぎるとハマらない感じがしたんですよね。それもあって、メンバーとしての個性をどう出したらいいのかは、迷ったところはあります。私はみんなが録ったあとのレコーディングだったんですが、エマちゃんの歌ののびのび感を出すと、ほかのみんなと伸ばしが合わなかったりして、そこは難しかったです。

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』より3ユニットがシングルをリリース! 中須かすみ、近江彼方、エマ・ヴェルデ、天王寺璃奈のユニット QU4RTZは「3組の中で、一番未知なユニット」【インタビュー】 | 超!アニメディア

 

 自由にやりたいと主張する嵐珠に対して、誰かと手を組んでも自由にできなくなるわけではない事を主張するなら、Diver DivaやA・ZU・NAの方が適任なはずである。

 しかし、今回のエピソードを担当するのは、むしろ3ユニットの中で一番自由とは程遠いユニットであるQU4RTZなのである。

 

 

 このことから、考えられるのは、嵐珠の「自分のやり方で高みを目指したい」という主張に対して、彼女たちの主張の軸が、「自分のやり方」=「1人で自由にできる」事に対してではなく、「高みを目指したい」というポイントに対して置かれたものではないかという事である。

 

 現時点のQU4RTZの在り方は、「みんなで一緒に自由に歌うことができる」という主張を裏付けられるようなものではなく、むしろ、「みんなに合わせること」の良さを解き、「個性を抑えてみんなで合わせても高みに到達できる」という主張に対して説得力を与えるものである。

 

 そもそも、QU4RTZというユニット自体が、言葉を選ばなければ弱者の寄せ集め、強ユニットの余り物である。

 

 スクールアイドルとしての実力で同好会の中で頭一つ抜けているせつ菜やしずくと、主人公格であり、実質的なリーダーとしてセンターに陣取る歩夢という同好会トップクラスの実力者の集うA・ZU・NA。

 最強格であるせつ菜ですら、後出しからアカペラという必殺技を使ってなお1票差という僅差でしか超える事ができない、文句なしの新しい最強格である愛に、同好会代表としてフェスに殴り込む代表は誰かという問いに対して最終的に支持を集め、せつ菜と並ぶもう1人のトリである果林*5擁するDiver Diva。

 

 それに対して、かすみという同好会最強候補はいるにしても、その他はビリスタの常連3人であるQU4RTZは、ユニットのパワーバランスとしてお世辞にも他2ユニットと同格とは言い難い。

 

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 A・ZU・NAの3人も、自身がスクールアイドルであると同時に、ファンであるという定義から外れるはずはなく、むしろせつ菜に至ってはこの場にいない事が不自然である。

 

 

 また、「調和」というテーマに対して、この中で一番実力のあるかすみがあまり理解を示していないような描写も多い。

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 アニメ2話も、嵐珠にお節介を焼く3人にかすみが戸惑うシーンが多く見られた。そもそもかすみにとって、支えあう事はそれほど重要ではない。嵐珠と同じように、ファンが着いて来さえすれば1人でスクールアイドルできるタイプである。

 また、スクスタでは部を、アニメでは遥を敵扱いするように、他のメンバーと違って意見や立場が違うスクールアイドルを仲間だと思っているような様子はない。むしろ、ライバルの事、他人事として捉えており、そもそもあまり他者の在り方に関心を持っていないようなキャラクターである。

 

 このように、QU4RTZは同好会下位3人と、ユニットのコンセプトをあまり理解していないかすみという構成になっているが、実際のパフォーマンスも、4人のハーモニーではあるが、その軸はかすみにあると言っていい。

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 パフォーマンス面でも他3人と比較してかすみの自己主張が強いことに違いはなく、他3人は自己主張の強いかすみに合うように歌っていると言える。

 

 これについても、1話で嵐珠の主張する「誰かに支えられなきゃパフォーマンスもできないアイドルなんて情けない」に対して、支えられることで高みを目指すことが出来るとの反論を掲げるための主張となりうるものである。

 

 個の実力で他のスクールアイドルに劣っていても、そうした弱者同士で支えあったり、強い者の力を借りることでそうした強者に引けを取らないパフォーマンスをすることが出来る。

 そうした主張の説得力を持っているのは、3ユニットの中でQU4RTZだけだろう。

 

 

 しかし、このようにQU4RTZが嵐珠の在り方に対して対抗しうるようなコンセプトのユニットであっても、それ自体は嵐珠が同好会に加入するきっかけになる事はないだろう。

 仮に、QU4RTZの在り方を正しいものとして嵐珠に提示し、彼女をそのように導こうとしているならば、それは1期序盤にせつ菜が同好会に対して行ったことと同じように、エマや彼方らによる一方的な押し付けでしかない。

 また、そうした在り方を単に彼女たちの在り方として提示するだけだとしても、嵐珠にとってそれが必要なものであるとは考え難い。

 

 以上の事から、現時点でのQU4RTZの在り方は、嵐珠を軸にした物語の中でなにか役割を持つことは難しいように思える。

 

 

ユニットの二面性

 しかし、それはあくまでも現時点でのQU4RTZを前提とした話である。

 そもそも、ここで挙げたQU4RTZの特徴は、「調和」=「ハーモニー」という1点でしかないが、他シリーズのユニットには、それぞれのユニットの特色が2つあったはずである。

 

 虹ヶ咲のユニットの楽曲は、A面とB面、得点1曲目2曲目のように、似通ったコンセプトのもので構成されているが、歴代シリーズのユニットはそうではなかった。

 

 例えば、ギャップのCYaRon!と呼ばれたCYaRon!は、王道アイドルソング路線の表題曲『元気全開DAY!DAY!DAY!』『近未来ハッピーエンド』『Braveheart Coaster』のようなA面楽曲のカップリングは、『夜空はなんでも知ってるの?』『海岸通りで待ってるよ』『CHANGELESS』『コドク・テレポート』であり、海岸通り以外はしっとりとした歌声による表現力を見せつけるような楽曲となっている。

 顕著なのはBiBiで、歌声だけで勝負するバラード寄りの曲である『ダイヤモンドプリンセスの憂鬱』『夏、終わらないで』『冬がくれた予感』『錯覚CROSSROADS』『Silent tonight』に対し、ライブで盛り上がる曲である『ラブノベルス』『Cutie Panther』『Trouble Busters』『PSYCHIC FIRE』『最低で最高のParadiso』のように、3曲ほど区分に困った曲はあったが2分される。

 

 このように見てくると、未だ一つの軸しか見せていない*6虹ヶ咲のユニットが、アニメを通して新しい側面を見せてくれることは十分に期待できるだろうし、もしかしたらそれが嵐珠にとって何か意味を持つものになるのかもしれない。

 

 

その他雑記

 このブログを書き終わるまで、タイトルをずっと『重なる音』だと思っていた。

 

 嵐珠の視点整理、エマの視点整理等も行ったが、一緒に整理をしていた人間がその点について記事を書くと言っていたので、大学が始まってあまり時間を取れなかった他人のネタを奪いたくなかったので、彼にお任せする事にした。

 

 

 

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えっ、14歳!?やば!!!

 

 

 

 

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 なんでこの人が年齢の話してると面白んだろ……。

 

 

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 ゲーマーズのシーン、これとかこれとかこれが並んでたりしないかなって探したりした。

「きゃあっ!かすみの写真集よ!すばらしいわ!」

って言ってる嵐珠、見たくない……?

 

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 太陽に一番近いのがかすみ。

 このあたりの、光との位置関係も結構示唆的で面白いなと思ったり。

 

 

 

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 同好会オリジナルメンバー上位のキャラが下位のキャラを見下ろしている構図も面白い。

 かすみより格下*7のしずくが一歩下がっており、愛、果林、せつ菜、歩夢と同好会最強候補となりえる実力者が横並びになっている。

 

 

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「何度でも飛ばせばいいのよ、千歌ちゃん」

「本気でぶつかって感じた気持ちの先に、答えはあったはずだよ。諦めなかった千歌には、きっと何かが待ってるよ」

 

 「あきらめないこと」が軸になっているキャラクターが紙飛行機を飛ばしているのは、流石に確信犯だと思いたい。

 

 

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 わたしです。

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 ステージから見た光の海ではなく、光の海を作っている側にフォーカスされたカット。

 ファンという大きな塊ではなく、その中にいるひとりひとり、わたしたちの側の人間ひとりひとりにフォーカスが当たっているが、「あなた」から独立したとはいえ、やっぱり侑は私たちの側の人間なんだなと思った。

*1:あたかも「こういうことを描いているシーンです」と見せかけ視聴者の注意を引きつつ、実際は同時に描くべき内容の布石が打たれている、という描写は1期の歩夢にも共通するものであり、作り手の癖が見えて面白い。

*2:「あなたと叶える」と対比となる「わたしを叶える」方では、「信じてる それだけじゃ叶うわけないよ」と語られるように、夢を叶える事は普通は気持ちだけじゃどうにもならないのである。

*3:立場が変われば、そうした行動をとるのがエマになるのも示唆的

*4:これに関しては、しずくの役割を演じるという特性が噛み合っているところがある

前田 しずくはつたなさとしっかりしたところの中間を取る感じで歌いました。せつ菜が熱血でかっこよく元気、歩夢がひたむきでまっすぐピュアさを歌うのなら、しずくは、まったりと落ち着くような歌い方がいいのかなと。潤滑油みたいに、なめらかな役割ができたらいいなと思って、かわいくするところはかわいく、元気なところは元気にということは意識して歌いました。

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』より3ユニットがシングルをリリース!上原歩夢、桜坂しずく、優木せつ菜の | ニコニコニュース

*5:ラブライブ!フェス、3rdLIVE

*6:Diver Divaに関しては『祭花 -saika-』『Fly into the sky 』のような楽曲があることを考えると、既に2面性があるかもしれない

*7:21章『悩めるしずくのイノセント』や1期8話『しずくモノクローム』を見るに、スクールアイドルという基準においてかすみがしずくに劣ることはないだろう