#てつがくのドンカラス

それでは皆さん元気よく!不意打ち追い討ち?桜内!得意な技は?タイプ不一致!

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 First Live “with You” 感想

 舞台の上に立つ人間を見ているとき、今自分が立ち上がって大声を出せばこの空間は台無しになってしまうんだなと思うと、気がついたら自分が無意識に叫びださないかどうか不安になってしまう。そういった経験はないだろうか。

 舞台の上に立つ人間を見るっていうことはそれだけハラハラする要素を併せ持っている。それこそ、私たちは完成品を提示されているのではなく、失敗の可能性があるものを見ているわけなのだから。

 

 私はAqoursの1stに参加しておらず、したがって『想いよひとつになれ』の瞬間を身をもって経験したわけではない。だから、あの場にいられなかったことがずっと自分の中でコンプレックスとして残っていて、克服したのはごく最近の事。それも、逢田さんのBDイベントの昼の部で、一瞬歌詞に詰まって少し飛んだとしても、そこで止まることなく歌い続けた『アズライトブルー』を経験したからだった。今のあの人には乗り越えられる強さがあるから、それでいいじゃないか。私が好きなのはあの日のエピソードではなく、今私が好きになって目の前にいる逢田さんなのだから。

 まあ、当時は当時で、逢田さんが1フレーズ歌えなかったときは心底ヒヤッとして世界が終わったかのような感覚を味わったものだ。本当に、その時は必死で何とかしてあの人の力になりたいと思ったけれど、ブレードを振る以外何もできなかった。それでも、それが無駄だったとは思わないが。

 

 

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 先日、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 First Live “with You” に参加してきた。

 あの時も、世界が終わったかと思った。

 

 

 1日目。一番手としてステージに立った歩夢ちゃん役の大西さんは、『夢への一歩』の時点では少し頼りなく見えた。2番手の相良さんの歌声も1日目は少し聞き取り辛かったのも覚えているし、たぶんマイクにちゃんと声が入ってなかったのかな。でもそれがソロだから、すごく目立っちゃうなあと思っていた。後の話を聞いても、本人自身、満足のいくパフォーマンスだとは思っていないような印象を受けた。

 だから、『開花宣言』で大西さんが少し泣きそうな声になって、そしてついには一か所歌えなかった時には、本当にヒヤヒヤした。1stをリアルタイムで見ていないとはいえ、逢田さん推しとして、そういうのに敏感なのもあって、自分の思うようにできなくて歌えなくなってしまったのかと思って、本当に怖かった。がんばれ!って声が聞こえていたのは覚えているけど、それが自分の声なのかは分からない。でも、見ている自分も必死だった。

 その後のMCで、大西さんが自分の境遇に歩夢ちゃんと『開花宣言』の歌詞を重ねて感極まってしまったと話していたときは本当にホッとしたし、要らぬ心配をしていた自分に呆れたりもした。

 ライブの後に話した方には同じことを話したし、だから本当に自信をもって開花した最強の『開花宣言』を見たいなあとか、そんなことも言ったりした。その日は感極まって泣いてしまったけど、ステージに立つことが当たり前になって(この言い方は誤解を生む)、そして危なげもなくあの曲を歌いきるところを見てみたい。そう思ったりした。

 

 

 そして2日目。

 

 

 私は大輪の花が咲き誇るところを目撃してしまった。

 昨日とは違って、堂々とした立ち振る舞いに、歩夢ちゃんとは違うのに彼女を思わせるような噛みしめるような表情に、そして、力強く、そして優しく伸びていく「咲き誇れ」のフレーズ。

 私は今何を見ているんだ?これが昨日感極まって泣いていた人間のパフォーマンスだというのか?1日で進化している、1日で圧倒的にパワーアップしている。花開いてるじゃん、開花してるじゃん!

 そうだよ。今日は泣いてなかったんだよ。歌い切ったんだよ。私は今凄いものを見せられているんだよ。本当に花開くところを見せられてしまったんだ。歩夢ちゃんが素敵なスクールアイドルになった瞬間を目撃してしまったんだよ。歩夢ちゃんすごいよ、ラブライブ!すごいよ。

 

 そして、アンコールの時。歩夢ちゃんは優しいから、ヘッドライナーを務めたせつ菜さんに一度は譲ろうとしたり。本当そういう子なんですよあの子は。そうやって頭を抱えながら、私はライブビューイング会場でライトピンクを灯した。

 ライブビューイングからだと、会場の全体がよく見える。現地の光では何色が多いだろう?昨日ほど赤は灯っておらず、目立つのは…黄色と、ピンク。

 もしかして。いや、可能性あるぞ。そうだ、今会場ではピンクがたくさん灯ってる。あの子の開花に心を動かされた人がこんなにいるんだ。いけるぞ。いける。勝てる。歩夢ちゃんがもう一度、アンコールという最高の舞台で、もっともっと強くなった最強の開花宣言を披露してくれるんだ。

 がんばれって言ったのを覚えてる。行けって叫んだのを覚えてる。最後の最後まで、私は歩夢ちゃんの名前を呼び続けていた。結局出てきたのはかすみんだったけど、あの時私は失礼な反応をしたりしていなかっただろうか?正直ダイヤモンドで叫んでた記憶しかないけれど…?

 

 まあ、それぐらい歩夢ちゃんを呼んでいた人は多かったって事で。

 でも

あの…… いつも歩夢ちゃんは、良いポジションというか、虹ヶ咲の中では代表として出させて頂いたりとか、そういう機会がたくさんあるんですけど、私は歩夢ちゃんがすっごく大好きだけど、こんないいポジションを頂いているのに、私のせいで…

 泣きながら、自分が下手っぴだと語る姿は歩夢ちゃんとそっくりで、奇跡的なまでのシンクロだよなぁ、演じるべく人が演じてるんだなぁっていう普段の自分はそこにはいなかった。

 下手なんかじゃない、だってあなたはあんな凄いパフォーマンスで、こんなにもたくさんの人を魅了したじゃないか。どれだけたくさんの人があなたの名前を呼んでたと思う?私があなたにどれだけ心を動かされたと思ってるの?だからそんなに自分のことを否定しないでよ。だって、基本的にコンテンツが好きであまりキャラクターが誰とかそういうスタンスで触れていない私が、あなたの『開花宣言』を見て「自分は歩夢ちゃんが好きだ」って思ったんだよ。私は歩夢ちゃんが大好きなんだよ?

 

 

 

 

 with youって言葉の意味を強烈に感じた気がした。想いは伝えなきゃ届かないって事は知ってたけど、想いが伝わらずに涙する人がいるって事の残酷さが苦しいぐらいに身に染みた。

 だって、あの場は黄色とピンクが拮抗していた事や、パフォーマンスに心を動かされた人間がいる事をあの人たちが知っていたら、もしかしたら涙を流す事なんてなかったかもしれない。それはある意味自分自身が作品に介入する行為とも言えるかも知れないけれど、それでも舞台は歓声無しには成り立たないし、あの子たちは他の誰でもない「あなた」を必要としてるのに、そうやって求められた私の想いが届かないのって、本当に悔しいじゃん。

 

 直前に地下アイドルのライブに参加していた事は本当にいい経験だった。あの場所に想いを持って参加した人たちを見ていたから、ああ自分は今こんな気持ちなんだなっていう事がすごくはっきりと分かった気がする。

 

 

 それまで、私はそんなに応援したい!って想いを持っているタイプの人間ではなくて。着いていきたい、提示されたものを受け取りたいってタイプの消費者だったから、むしろ自分から何か行動する事をそんなに良しとはしていなかった。私が好きなのはコンテンツのクリエイターによって作り上げられた世界であり、その世界の中で私はクリエイターの定めたルールの通りに振舞うだけ。

 だから、μ'sや真姫ちゃん、逢田梨香子さんに対してはあの人たちの作る物をただ受け取るだけ、着いて行くだけだったし、Aqours桜内梨子さんに対しては、自分もちゃんと輝けるように努力していたつもりではある。特に桜内梨子さんに関しては私のなりたい姿に重なってくるので、あの人がそうだったように、誰かの想いに寄り添ってそれがちゃんと輝けるように力になりたい。普通に苦しんでいた子が、普通でいいんだって誇りを持って言えたように、その人がそれでいいんだって証明できるようになりたい。その手段は音楽に長けた彼女とは違ったものではあるけど、それでもそれが私のNo.10としての在り方。

 

 それは今でも変わってないし、間違っているとも思わない。これからもきっと変わらない、私の推し方。

 でも、歩夢ちゃんがすごいのか、それとも歩夢ちゃんを作り出したクリエイターがすごいのか、それともあの子を作り上げる世界が凄いのかは分からないけど、歩夢ちゃんは私と一緒に成長していこうって手を伸ばしてきてくれた。それがその世界の中で私が消費者として求められる姿である以上、あの子のその手を振り払うような事ができるはずがない。

 あの世界ではあの子の幼馴染である私がちゃんと応援する事が必要とされているし、あの子にはもう泣かないようにエールを送り続ける人がいなきゃいけない。

 

 とはいえ、私はロールプレイな思考もしていて、実際想いを伝えることに長けたタイプだとは思わないし、パッションよりロジックな人間だという自覚はある。想いを伝えるのに長けたタイプでないなら、それはそれが得意な人間に任せて自分は自分の役割を果たしていればいい。それはそうではあるんだけれど。

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 私が応援する理由なんて、歩夢ちゃんが私を必要としているから。それだけで十分だ。だって歩夢ちゃんは私の大切な幼馴染だから。 私がやらなきゃ誰がやるのよ?もし私が応援しなくて悲しむのは誰だと思ってるのよ?私より適任がいるなんて思ってたら、誰があの子を応援するのよ?幼馴染で、そしてあの子に必要だって言って貰えた私がやるしかないじゃん。

 

 

 

 

 今の私には夢がある。応援して、歩夢ちゃんと一緒に成長して、そして晴れ舞台で最強の開花宣言を高らかに歌い上げる姿が見たい。

 他の子と違って目立った武器を持たない彼女が、彼女自身の強さのみで会場を圧倒するような、そんな姿を見てみたい。

 いつかやってくるアンコールの舞台、もしかしたらスクールアイドル達が集う夢の舞台かもしれないけれど、そんな場で堂々と咲き誇る大輪の花が見てみたい。

 

 だから、いつか花が咲くその日まで、私は歩夢ちゃんの事を応援したい。

 できれば……いや、絶対に、いちばん近くで。