#てつがくのドンカラス

それでは皆さん元気よく!不意打ち追い討ち?桜内!得意な技は?タイプ不一致!

遠く離れて 気がついたこと。

ラブライブ!ANNの、役割の話に寄せて。

 

 

 

 人には、特に創作の中の役割を持ったキャラクターには得意不得意がある。特に、チームでラブライブ攻略を目指すこの作品のストーリーにおいてそれは顕著だと思う。誰かにできないことはほかの誰かがその穴を埋める。RPG等にこんな鉄則があるように、基本的に一人ですべてを解決しようなんてことはできないのである。野球は一人じゃできない。

 そんな作品のなかで、プロフィールにちょっと気になる一文が書かれた子がいる。

f:id:Darkphoenix505pianoLes:20191027132024p:image

明るい性格で、個人行動が多い

 

 このコンテンツにおいて、彼女のこの一文はあまりにも不自然ではないか。でも、確かにそれは事実なのである。彼女の環境がそうさせたのであろう。彼女はいつだって一人で戦ってきた。周りが見えているのに、周りに相談しないからすれ違ったこともあったし、千歌たちとスクールアイドルをやっている間ですら、彼女は一人見えないところで戦いづつけてきた。理事長なんていう、たかが17歳の女子高校生に不釣り合いな役職を背負って。

 

 今回は、そんなちょっと変わった特性を持つ彼女についてのお話。

 

 

 さて、そんな個人行動の多い彼女を見ていくにあたって、比較対象として注目すべき人物がいる。同じくAqoursでスマイル属性の主人公、高海千歌だ。二人を比べてみると、かなり多くの共通点を見て取れる。

f:id:Darkphoenix505pianoLes:20191028160624p:image

 明るい性格や負けず嫌いなところ、家が宿泊施設なところ。組織の代表であるということ。わかりやすいところでも枚挙に暇がない。(同じ属性なのでそれはそう。)

 だが、小原鞠莉と主人公である高海千歌には決定的な違いがある。いや、この違いこそが彼女たちを彼女たちたらしめ、ひいてはラブライブ!サンシャイン!!という作品の核であるといえるだろう。それは、主人公でない小原鞠莉には奇跡は起こせないということだ。

 

 創作における役割というものは、現実のそれより絶対的なものだ。確かに、小原鞠莉高海千歌のように足掻いた。必死に戦い続けた。だが、奇跡を起こしたのはいつだって主人公だった。思えば、鞠莉には失敗の描写がとても多い。初代Aqoursは解散、学校説明会は中止になり、そして学校は廃校になった。幼馴染と2年間もすれ違い、海外での単位も落としたそうだ。

 それに比べて高海千歌はどうだろう。確かに彼女は失敗もしてきた。だが、鞠莉には成し遂げられなかった奇跡を起こしたのは彼女だった。曜や梨子の言うように、今のAqoursがあるのは彼女がいたからだ。かつて3年生が決めることのできなかった大技を決め、立つことのできなかった舞台までAqoursを導いたのは誰だったか?

 別に彼女を悪く言いたいわけではない。ただ、奇跡を起こすのは主人公の役割であり、単に彼女は奇跡を起こす役割でなかったというだけの話。むしろ、前作の同じくスマイル属性の3年生と2年生である矢澤にこ高坂穂乃果の関係なんかも踏まえてもっと突っ込んでいえば、主人公である高海千歌の奇跡を描くために、小原鞠莉という「主人公になれなかったキャラクター」がいるとまで言えるかもしれない。

 そう考えると、「めげない性格」「チャレンジャー」なんかも、なんとなく失敗を前提にして書かれているような気もしてくる。

 

未来に向けて、歩き出さなきゃいけないから……みんな笑うのだろう。

一番叶えたかった夢は、叶えられず。 

  

 

 「主人公になれなかったキャラクター」、失敗を前提とした設定などと書いたが、では作中で小原鞠莉はなぜ失敗するのか。ここが、先に述べた『個人行動が多い』につながっていると思う。

 初代Aqoursは、思えば全員がリーダー気質だった。果南はリーダーだったし、ダイヤは生徒会長。鞠莉は理事長だ。そして、すれ違いの原因も、鞠莉と果南が互いに独断で動いたこと、鞠莉個人への負担が重かったこと。

 理事長として大人たちと交渉を続けてきた鞠莉。でもそこに他のメンバーが介入できる余地はない。彼女の孤独な戦いは、私たちの前に描かれる事すらない。あくまでも「説明会中止」「日程変更」「廃校確定」の結果を突き付けただけに過ぎなかった。そもそも、彼女が帰国して理事長になったのも独断だったようだ。

f:id:Darkphoenix505pianoLes:20191028173427j:image

ごめんなさい……ごめんなさい……

もう少し頑張れれば……もう少し……

  本当にこの人、いつになっても自分一人で背負い込む。『個人行動が多い』、なんて書いてあるけど、軽く流せるようなものじゃなくて、『人に頼れない』っていう致命的な弱点だろう。

 対して高海千歌の起こした奇跡は、人にちゃんと頼れたからこそ起きたものだった。末っ子であることは、甘えられることの暗示でもあるのだろう。むしろ、彼女は頼れはするが頼る自分自身の能力(=役割)を自覚していないところに問題があったのだが。

 

 

 では、どうして彼女はこうも人を頼れないのだろうか?ここでも、高海千歌と比較して見ていこう。高海千歌が、かつてのAqoursでは決めることのできなかった大技で奇跡の波を巻き起こせたのは、見えない力を信じることができたからだ。アニメ2期3話『虹』で起きた奇跡は、完全に偶然だった。進むべき道を間違えずに、細い勝ち筋を通しただけだったが、その2つの話の間に挟まれた2話によって2期第6話『Aqours WAVE』は、単なる運ゲーではなく、約束された奇跡として描かれた。2期第4話『ダイヤさんと呼ばないで』、第5話『犬を拾う』ではそれぞれ、「ダイヤさん」という役割と、「見えない力」を捉え世界の見方を少し変えようとする視点が描かれた。

 そして、それらの力が実際に必殺技の発動条件を満たすものとして描かれたのが『Aqours WAVE』だった。高海千歌が、自分がリーダー(=奇跡を起こせる主人公)であることを、千歌がこれまで歩んできた道の中で培った信頼と期待という見えない力が証明する。高海千歌を一番よく知る「相棒」役の渡辺曜と、高海千歌の奇跡の「象徴」役桜内梨子たちの見えない力によって、「奇跡を起こす主人公」役高海千歌は、「試練」役松浦果南を打ち倒したのだ。

 それに対して、鞠莉は見えない力を信じる事から一番遠い存在だったように思える。とある方が、「学校」「練習ノート」「星座早見盤」のように、鞠莉は目に見えるものへの執着が強いとの話をしていたのを聞いたことがある。だから、逆にそれは彼女が目に見えない物に対して疎い存在であった、と。「主人公になれなかったキャラクター」として彼女がそうであることは理にかなっているが、本当にそうか。見てみよう。

 鞠莉にとって見えない物といったら、人の気持ちだと思う。1期でやっと9人になって『未熟DREAMER』を披露するまで、お互いに気持ちを伝えなかった果南と鞠莉はずっとすれ違っていた。実際に鞠莉が果南の気持ちを知ったのは、ダイヤに直接伝えられたからだった。

 

f:id:Darkphoenix505pianoLes:20191030174742j:plain

だったら素直にそう言ってよ!

 この人たち、素直に言わなきゃ本心が分からないくせに本当に素直に言わない。

 1期第11話『友情ヨーソロー』で、渡辺曜の悩みを聞く鞠莉。だが、曜の悩みを実際に解決したのは桜内梨子だった。彼女の悩みは、鞠莉が思っていた「梨子への嫉妬」ではない。「梨子に嫉妬してしまう自分が嫌だ」なのであり、正しい対処は「気持ちをぶつけて来い」ではない。「高海千歌にとって渡辺曜はどんな存在か」をちゃんと伝えてあげることだ。千歌にとって、そして梨子にとっても、ステージの上で震える手を握ってくれる最高の相棒は渡辺曜なのだから。だから、この時の鞠莉は、嫉妬という表面的な物しか見えておらず、嫉妬の裏にある自分自身への嫌悪に気づいていないのだ。

 やっぱり、特に1期が顕著だが、本当にこの子人の内面が見えない。ほかの子を信用してないとかそういう話ではないけれど、少なくとも人に頼れない理由として、人の内面が分からないってこともあるんじゃないかなと思ったりする。ダイヤさんには話を聞かないとか言われていたし。信用や絆が鞠莉に欠けているとは言わない。だけど、例えばあの子がいちいち承認の版を押したがるのは、彼女の行動で信用するとかそういう見えない物に関係することに、敢えて形を与えているんじゃないかなとは思う。

 

 

 

 アニメ内で、特に2期前半で私の心に訴えかけてきた小原鞠莉は、こうやって人に頼ることを知らないまま一人で戦って、屈して涙する姿だった。誤解を恐れずに言えば、キャラクターの役割としてはおそらくそれだけでいいのだろう。彼女が失敗することで、それを乗り越えていく千歌が描ければ作品としては十分だ。

f:id:Darkphoenix505pianoLes:20191030151527j:plain

 

 作品としては、小原鞠莉によって描かれるものはこれで完結できるはずだ。でも、ラブライブ!サンシャイン!!はその程度では終わらない。高海千歌の奇跡は、人に頼れず奇跡を起こせなかった小原鞠莉を変えてしまうだけのパワーを持っているし、そうして今変われたからこそ、小原鞠莉というキャラクターはその一挙一動で心に訴えかける事において右に出る者がいない程の存在であるのだろう。

 

 

 

 変われた、と一言で言っても、創作においてそれは、「結果として変わった」のと、「変わるためのイベントがあった」で意味合いは変わってくるだろう。例えば、ステージに立つのを恥ずかしがっていた園田海未桜内梨子なんかは、明確に変化した瞬間を定めるのは難しいだろう。逆に、松浦果南が呪縛から解き放たれた瞬間ははっきりと線引きできるはずだ。

 

 これを踏まえて、10話『シャイニーを探して』とアニメ2期11話『裏の星女学院』の、鞠莉を見てほしい。

 救われた、とか報われた、とか、そんな言葉で表現したらいいのだろうか。1人で戦ってきた彼女に、何本も、何本も手が差し伸ばされた。

 

 「ずっと一緒にいられますように」

 もうその願いは叶わないと笑う彼女に手を差し出したのは、奇跡を起こす主人公だった。いつだったか、鞠莉さんは形あるものしか見えなくて、それにこだわり続けてきたという話を聞いたことがある。でも、そんな彼女に対して主人公が投げかけた言葉は、

 

f:id:Darkphoenix505pianoLes:20191030150430p:image

なれるよ、絶対なれるって信じてる。

 

この雨だって、全部流れ落ちたら、きっと星が見えるよ。

だから、もっともっと遊ぼう。 

  信じることなんて目に見えない。雲に隠れた星たちも、鞠莉1人だったら見えなかっただろう。確かに、このドライブを主導したのは鞠莉だった。ダイヤや果南の運転よりマシだとか冗談を言ってるけど、まあこれが人に任せられないからというのは、邪推だろう。 でも、結局シャイニーを見つけたのは千歌だった。

 

 

 そして、このシーン。

 

f:id:Darkphoenix505pianoLes:20191030151319j:plain

みんなありがとう……!

f:id:Darkphoenix505pianoLes:20191030174745j:plain

 じゃあラストにみんなで一緒に歌おう!

最高に明るく、最高に楽しく、最高に声を出して!

 私は、小原鞠莉が変われたのはこの瞬間だと思っている。直前まで、廃校という事実を痛感し涙を流した彼女は、ここでようやく目に見えない物を感じ取って、そしてそれを受け入れることができたのだろう。これまで裏の星を守るために頑張ってきたことへの感謝だとか、Aqoursである自分たちが、裏の星の代表として認められ愛されていること。そして何より、そういう人たちが自分の味方なんだってことに、やっと気づいた。

 

 この瞬間から、小原鞠莉は孤独ではなくなった。もう見えるものだけに振り回され迷うだけの彼女じゃない。

f:id:Darkphoenix505pianoLes:20191030185735j:plain

一緒だよ。この空は繋がってるよ。

どんなに遠くても、いつでも。

姿は見えなくても。

 最後の一言はダイヤに任せた鞠莉さん。ダイヤさんの言ったことは本当になるので、信じて大丈夫だ。保証はないけれど、信じてる。

 

 

 

 そうやって、奇跡を起こす主人公によって変わることができた鞠莉。繰り返すが、「主人公になれなかったキャラクター」の話をここまで掘り下げる必要は、実はないのである。それでもラブライブ!はすごいので、ちゃんと鞠莉を救ってくれる。そして、劇場版で描かれたのは、鞠莉が救われたその先だった。

 

 

 ここまで私は散々鞠莉さんのことを主人公になれなかった人間だと語ってきたが、別にキャラの役割は何も1つしかないわけではない。例えば、園田海未は「頑張ること」の象徴でもあるが、同時にリセッターとしての役割を持つ。暴走特急高坂穂乃果を操縦するのは絢瀬絵里だが、絵里の操縦が利かないぐらい脱線した時に強引に線路に戻すことができるのは園田海未だけだろう。鞠莉と同じく初代Aqoursの2人も、それぞれ纏め役だったり、調整役だったり別の役割を担っている。だから鞠莉さんの役割も、別に千歌の引き立て役だけではない。

 

 Hop? Stop? Nonstop!では、母親にスクールアイドルが素晴らしいものであることを伝えるために、鞠莉がセンターで歌っていた。私は、この時に確信した。小原鞠莉は「主人公になれなかったキャラクター」であるが、同時に「Aqoursのエース」であると。

 流石に主人公になれなかったキャラクターに無条件でエースの役割は割り振られない。彼女がエースでいられるのは、高海千歌に救われ、人に頼ることを覚えたからである。RPGっぽい発想になるが、エースとは言い換えればメインアタッカーだ。回復や補助は味方に任せ、自分はそれを受けて火力を出せばいい。

 彼女が母親に対して、スクールアイドルはくだらなくなんかないと叫んだ時。あの時、鞠莉は1人で戦っていなかった。手を掴まれたときに、すぐに2人の親友が引き戻してくれたし、しかもそのうち1人はしっかりしている生徒会長ダイヤさんだ。彼女が味方にいるって事は、間違っていないって事である。(直前に空気を読んで千歌を諫めていたのがそれを強調する)間違っていないので、他の6人も迷いなく鞠莉の後ろで戦ってくれるのだ。もちろん、後ろにいて見えなくても鞠莉は分かってる。

 実際ライブを行うにあたって、その場所選びは1年生に任せたわけだが、この1年生という集団、あの『Awaken the power』を企画し成功に導いたのである。今までの鞠莉だったら、自分で場所を決めていただろう。実際に、途中まではその流れだった。だが、役割的に言えば、企画は「正しい選択ができ成功に導くことができる黒澤ルビィ率いる1年生」に任せるのが正解である。成長した鞠莉は、上手く人に頼れている。

 

 さて、そうして仲間たちをちゃんと頼って、適材適所というラブライブ!の勝ち筋をしっかり活かして完成させた『Hop? Stop? Nonstop!』はどんなライブだったか?

 作中の具体的な話ではあるが、かつてμ'sはA-RISEから個人個人の役割を評価されたことがある。Aqoursも、3年生だけではあるが、聖良から同じように役割を評価されている。

松浦果南のリズム感とダンス、小原鞠莉の歌唱力 、黒澤ダイヤの華やかさと存在感。それは、Aqoursが持つ明るさや元気さそのものでしたから。

  作中で、鞠莉は「歌が上手い人」という扱いも受けている。それを踏まえた上で、『Hop? Stop? Nonstop!』を見てほしい、いや、おそらくこれは殆どの視聴者の共通認識だろう。

 

 『Hop? Stop? Nonstop!』は、エース小原鞠莉の最強の武器である歌唱力を最大限に活かした必殺技である。

 

f:id:Darkphoenix505pianoLes:20191030222358j:image

 

 私はこのライブを見たとき、無印2期9話『心のメロディ』を思い出していた。あの時も、1人1人が各々の役割を果たし、そして頼るべき人に自分の出来ないことを任せることで放った、「エース高坂穂乃果のカリスマ性を最大限に活かした必殺技」が『Snow halation』だった。あの時、画面の向こうの私たちに、穂乃果は表情で訴え会場を彼女の色にして見せたが、鞠莉は歌唱力によってそれをやってのけたのだ。

 冷静に考えて、小原鞠莉はそれまでずっとその一挙一動に込められた感情で人の心を動かしてきた。そんな彼女がセンターで、みんなに支えられながら自分の得意分野を存分に発揮しているのである。人の心に訴えることではただでさえ右に出るものがいないほどなのに、そこに歌唱力を上手く組み合わせ、1番注目が集まる環境を作ってから解き放つ。最高の采配である。昔はできなかった、1年生を頼って任せることが出来るようになったからこそできるパフォーマンス。

f:id:Darkphoenix505pianoLes:20191030202339j:plain

ママやパパが私を育ててくれたように、ここにいるAqoursやみんなが私を育てたの。

何ひとつ手放すことなんてできない。

これが今の私なの。 

  彼女がもう1人じゃなくて、たくさんの人たちに支えられ、そして支えてくれる人たちをちゃんと信じる事ができる。改めて言葉にしなくても、鞠莉の母には伝わったはずだ。1人で勝手に決めて、そして失敗して躓くだけだった彼女は、もうきっと躓くことはないから。無理やり結婚相手なんて作らなくても、ちゃんと頼るべきところは誰かを頼ることができる。

 

 それまで彼女は、高海千歌を引き立てるための「主人公になれなかったキャラクター」でしかなかった。でも、こうしてやっと「エース」としての役割を果たす時がきた。このライブを通して、彼女はやっと「奇跡を起こせる主人公」と肩を並べる「圧倒的エース」になることができた。高海千歌高坂穂乃果になれなかったし、小原鞠莉高海千歌になれなかった。だが、この時小原鞠莉高坂穂乃果にはなることができた。私はそう思う。

 

 

 

 

 Aqoursのエースだった小原鞠莉は、これからも何かに挑戦しては壁にぶつかるだろうし、自分では解決できない問題に悩むこともあるかもしれない。でも、きっと彼女はもう1人で抱え込んだりしない。きっと助けてくれる誰かと一緒に乗り越えていける。

 もしも、1年前だったら。新しいAqoursをただ見守るだけなんてできなかったと思う。でも、1年間で人を頼ることを学んだ彼女は、つまんないと文句は言えど、口を出したりしない。きっと自分の見えないところで、後輩たちはちゃんと答えを出せるって信じられるようになったから。先輩だから、ちょっと様子見てやろうかなって覗きにぐらいは来る。でも、心配ないって分かったら気づかれる前に帰っていく。ちょっと寂しそうだけど、きっと彼女たちに不安なんて微塵もないだろう。大丈夫だって信じてるから。

f:id:Darkphoenix505pianoLes:20191030221549j:image

 そうやって、新しい輝きに向かって手を伸ばした後輩たちの門出を見届けた後。ちょっと名残惜しそうに去っていく彼女の表情が、私は忘れられない。本当に人の感情に訴えかけるのに優れている。

 彼女のソロ曲『New winding road』は、旅立った先でかつての日々を思い出す彼女の姿を思い浮かばせるものだった。

前を向いて新しい場所へ歩いて

道はずっとまっすぐ?違うねたぶん。

だからみんな元気でまた会えるように。

きっと逢いたい想いは伝わるからね。

それまではいっぱい頑張ってみようか

いつかまた語り合える日まで。

1人で歩きだしたら、もう1度夢見よう。

眩しい光探しにいこう。

  まだ見えないけれど、いつかまた9人が逢える日が来たとき、もっと強い自分でいたい。そんな想いが込められたこの曲が、あの時の表情と重なって見える。

 

 自分が去っても、自分がそこにいたこと、そこで勝ち取ったものは絶対に消えたりはしない。全部残ってるって分かっているから、後輩たちはいつだってそこにいない彼女たちと作り上げたものを忘れない。『Next SPARKLING!!』で描かれたその答えは、鞠莉たち3年生にとっても同じだ。たとえ離れて見えなくなっても、Aqoursと共に成長した鞠莉は、そこで得たものを失うことはない。

 形あるものしか信じられなくて、人に頼ることができなかった小原鞠莉。だが今の彼女は、絶対に消えない想い出を胸にしまって、想い出と共に歩き出している。

f:id:Darkphoenix505pianoLes:20191030221526j:image

一緒だよ。この空は繋がってるよ。

どんなに遠くても、いつでも。

姿は見えなくても。

  あの時、あのセリフをわたくしに任せたから。ほらご覧なさい。わたくしの言ったことは本当になるのですわ。

 

 

 

 

追記

 2020年2月8日、9日

LOVELIVE! SUNSHINE!! UNIT LIVE ADVENTURE 2020 Guilty Kiss First LOVELIVE! ~ New Romantic Sailors 

 

 

 小原鞠莉は、かつて高海千歌がそうしたように、桜内梨子津島善子と共にAqours最強の必殺技『WATER BLUE NEW WORLD』で、センターとして会場をギルティなシャイニーの海に変えてみせた。

 そこにいたのは、悔しさに涙する主人公になれなかった人間ではなく、その表現力と歌唱力で全てをひれ伏せさせる、最強のエースだった。

 それが今の小原鞠莉なのである。