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この数字が私たちの学校の、来年度の入学希望者数。
「嘘…でしょ…」
受付締め切りの過ぎたこの画面を、震える指で、何度も更新ボタンを押しても、数字が増えることはないのは、ここにいる全員が知っている。
「嫌だよ…ねえ…どうして?」
答えの無い、いや、答える者のいないその言葉は今にも消えそうで、弱々しく、それでもなお重くのしかかってくる。
沈黙の時間が過ぎていく。
「…やだ。」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!!!絶対嫌だっ!まだ終わりじゃない!終わらせないもん!」
唇を噛み締め、泣きながらも、その咆哮には弱々しさなんてなかった。その時確かに感じたのは、折れる事のない意志と、なお未来をまっすぐ見つめる強さだった。
「そうだよね、私たちの夢はまだ終わっていないよね。」
「そうだね。死ぬ気で考えれば、まだ廃校を無くせる方法はあるかもしれない。」
「「え???」」
隠されていた、いや、私たちが気づいていなかっただけ、目を背けていたかも知れない。
「待って、私たちはずっと、輝きって何だろうって。自分達らしさを見つけたいって、そうやって来たんじゃないの?」
「それはない。あくまでもそれはラブライブで勝つための手段でしょ?私たちは、ラブライブで学校を知ってもらって、廃校を無くすためにやって来たんでしょ。」
世界が、凍りつく。
「あの…ちょっと気になってたんだけど…、新曲考えるときに、輝き以外の何かって、そういう意味…だったのかな?」
「今気づいたのですが…手段と目的がメンバー間で噛み合ってなかったとか…?」
「確かに、私は純粋にスクールアイドルがやりたいからここにいるなあ」
「1つ聞いていいかしら?」
「輝き無しで学校を救おうと思いますか?それとも、学校を救うことを通じて、自分の輝きを見つけたいと思っていますか?」
「当然私は学校だよ。だってそのために始めたんでしょう?」
「わたし…違う。」
「わたしも違うかな。私は千歌ちゃんが本気だったから、一瞬に頑張りたいって」
「好きだったから、やりたかったから、だからやるって決めた。」
「あれ…どうして…だろ…。」
「これは…。」
「待ってよ。聞いてないよ。」
「…。」
「というかさ、私たちがスクールアイドル始める前、まだ廃校の話、あくまでも噂だっただけで、本格的に出てきたのは、善子ちゃんたちが入ってからだよね。」
「うん。私は一緒にスクールアイドルやりませんかって誘われたよ。」
「…から」
「だから何?まさか学校が無くなってもいいとか言うんじゃないよね?」
「そんなことは言ってないけど、でも、元々スクールアイドルをやる理由は廃校を救うためじゃないでしょ?」
「それ、本気で言ってる?」
「確かに…言われてみれば私の勘違いだったのかも知れない…でも」
「確かに、一年生二年生がスクールアイドルを始めてから、私たちが加入するまでの間でしたね。この問題が公になったのは」
「なんでよ…本気だと思ってたのに…」
「その言葉は違うんじゃないかな。本気で輝きたいって、本気で自分を見つけたいって思ったから、私はここまで頑張ってきたんだから、本気じゃないなんて言われたくない。」
「知らないよ…。」
「知らないよ!分からないよ!輝きとか言われても何のことか分かんないよ!さっきから曜や梨子が何言ってるのか全然分からない!はっきりして!廃校をどうにかする気はあるの?無いの?」
「ちょっと」
「どうせないんでしょ。だったらもういいです。私たち、スクールアイドルなんてやめてやる!!!!」
「いい加減にしてよ。話が飛躍しすぎだよ。」
「…私の信じた物を、そんなに簡単に否定されたくない」
「私、こっちにきて、この場所で、本当にいろんなものを見て、感じて、成長できたんだよ。だから…」
「だったら東京に帰ればいいのに。」
「え?」
「結局梨子は他所者だから、この場所自体は大事じゃないんでしょ。よく分からないけど、梨子の大事なものはここじゃなくてもあるんでしょ?だったらそれだけ持って東京に帰ればいい。私たちには、この場所しかないから。」
「 空欄 」